logo

ラグランジュの定理の証明 📂抽象代数

ラグランジュの定理の証明

定理 1

HH有限群GG部分群であれば、H|H|G|G|約数である。

証明

少し考えれば、常識的に成立するし、証明もそれに相応しく簡単だ。

全ての剰余類は同じ数の元を持つ。HHGGの剰余類の一つであるから、HHの剰余類の濃度H|H|である。剰余類はGGの分割を成すので、全ての剰余類の濃度を足すとG|G|になる。HHの剰余類の数を(G:H)( G : H )、これをrrとすると G=H+H=rH |G| = |H| + \cdots |H| = r |H| よって、H|H|G|G|の約数である。

有限群GGにおいて、G|G|素数ならば、GG巡回群である。

例えば、素数ppに対して、Zp\mathbb{Z}_{p}は明らかに巡回群である。

反例 2

交代群A4A_{4}は、ラグランジュの定理の逆に対する反例である。

ラグランジュの定理の逆が成立すると仮定すれば、A4=4!2=12\displaystyle | A_{4} | = {{4!} \over {2}} = 12であるから、H=6|H| = 6を満たすHA4H \leqslant A_{4}が存在するだろう。具体的には、A4A_{4}は次の3種類、12の巡回群で構成されているため、HHはそのうちの6つの巡回で構成されている。

  • 長さ11恒等元: ee
  • 長さ33巡回33-巡回: (1,2,3)(1,3,2)(1,2,4)(1,4,2)(1,3,4)(1,4,3)(2,3,4)(2,4,3)(1,2,3) \\ (1,3,2) \\ (1,2,4) \\ (1,4,2) \\ (1,3,4) \\ (1,4,3) \\ (2,3,4) \\ (2,4,3)
  • 長さ22置換の積、クラインの四元群: (1,2)(3,4)(1,3)(2,4)(1,4)(2,3)(1,2)(3,4) \\ (1,3)(2,4) \\ (1,4)(2,3) これらと恒等元eeだけを集めたVA4V \leqslant A_{4}クラインの四元群同型である。その意味で、このポストでは、これらを単にクライン四元と呼ぼう。

さて、HHがこれらの元とどのような関係にあるか見てみよう…

  1. HHであるから、恒等元eeを持たなければならないので、実際には55個の巡回を選ぶ必要がある。
  2. ラグランジュの定理が成立すると仮定すると、濃度が22であるH2HH_{2} \subset Hも存在しなければならないので、HHには少なくとも一つのクライン四元を含まなければならない。
  3. クライン四元は3つしかないので、HHは少なくとも2つの33-巡回を含む必要がある。
  4. αH\alpha \in Hならば、α2H\alpha^2 \in Hでなければならない。しかし、(1,i,j)2=(1,j,i)(1,i,j)^{2} = (1,j,i) であるため、HH33-巡回が含まれる場合、偶数個でなければならない。恒等元を含むために、66個を持つことはできない。

要するに、HHは少なくとも一つのクライン四元と少なくとも2つの33-巡回を持つ必要があり、特に33-巡回は偶数個でなければならないので、可能性は33-巡回が2つか4つかのみである。単純にケースを分けて考えよう。

  • Case 1: 33-巡回2つ、クライン四元3つ
    (a,b,c)(a,c)(b,d)=(b,d,c)H(a,b,c) \circ (a,c)(b,d) = (b,d,c) \notin H どの巡回(a,b,c)(a,b,c)を含むかに関わらず、HHは全てのクライン四元を持っているので、(b,d,c)(b,d,c)を得て、したがってHHは巡回の積に対して閉じていない。

  • Case 2: 33-巡回4つ、クライン四元1つ
    一般性を失わず、HH33-巡回の一つを(a,b,c)(a,b,c)、クライン四元を(a,b)(c,d)(a,b)(c,d)とする。ポイントは、(a,b,c)(a,b,c)に含まれないddがクライン四元には存在することである。 (a,b,c)(a,b)(c,d)=(c,d,a)=(a,c,d) (a,b,c) \circ (a,b)(c,d) = (c,d,a) = (a,c,d) したがって、HHは正確に33-巡回(a,b,c),(a,c,b),(a,c,d),(a,d,c)(a,b,c), (a,c,b), (a,c,d), (a,d,c)を持たなければならない。しかし、 (a,d,c)(a,b)(c,d)=(b,d,a)=(a,b,d)H (a,d,c) \circ (a,b)(c,d) = (b, d, a) = (a,b,d) \notin H したがって、やはりHHは巡回の積に対して閉じていない。

ラグランジュの定理の逆が成立しないことを示す反例として、HHになり得ないことを確認した。


  1. Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p100. ↩︎

  2. https://www.mathcounterexamples.net/converse-of-lagrange-theorem-does-not-hold/ ↩︎