部分環の定義と部分環判定法
定義 1
環 $R$の部分集合 $S$が環 $R$の演算に対して環の条件を満たすとき、$S$を環 $R$の部分環$\mathrm{Subring}$という。
一方、$\left\{ 0 \right\}$と $R$は環 $R$の部分環であることが自明なので、$\left\{ 0 \right\}$と $R$を自明な部分環($\mathrm{trivial\ subring}$)という。
定理: 部分環の判定法
環 $R$の空集合ではない部分集合 $S$に対して、$a,\ b$が $S$の要素であるとき、$a-b,\ ab$も $S$の要素であれば、$S$は環 $R$の部分環である。つまり、$S$が引き算と掛け算に対して閉じていれば、環 $R$の部分環である。
証明
$a,\ b$が部分集合 $S$の要素であるとき、$a-b,\ ab$も $S$の要素であると仮定する。
- 仮定により、部分群の判定法によって、$S$は加法に関して群である。
- $S$の演算は環 $R$の演算と同じなので、交換法則が自明に成立する。
- 仮定により、掛け算に対して閉じていることも自明である。
- 部分集合 $S$の演算は環 $R$の演算と同じなので、掛け算に対する結合法則が成立することも自明である。
- 同じ理由で、部分集合 $S$内で加法と掛け算に対する分配法則が成立することも当然である。
1〜5により、部分集合 $S$が両方の演算に対して閉じており、加法に関してアーベル群であり、掛け算に対する結合法則が成立し、加法と掛け算に対する分配法則が成立しているので、$S$は環である。したがって、部分集合 $S$は環 $R$の部分環である。
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Fraleigh. (2003). A first course in abstract algebra(7th Edition): p173. ↩︎