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抽象代数学における剰余類と正規部分群 📂抽象代数

抽象代数学における剰余類と正規部分群

定義 1

  1. 集合$G$とその部分群$H$で$aH = \left\{ ah \ | \ h \in H \right\}$が左余剰類left Coset、$Ha = \left\{ ha \ | \ h \in H \right\}$が右余剰類right Cosetと言われる。ここで$a \in G$、$aH, Ha \subset G$だ。
  2. $H \leqslant G$の左(右)余剰類の数を$(G : H)$と書き、$G$における$H$の指数indexと言う。
  3. $H$が$G$の部分群であり、全ての$g \in G$に対して$gH = Hg$が成り立つなら、$H$を$G$の正規部分群normal Subgroupと言い、$H \triangleleft G$で書く。
  4. $H = \left\{ e \right\}$や$H = G$以外の$H \triangleleft G$を持たない$G$を単純simpleと言う。つまり、$G$が単純だとは、$\left\{ e \right\}$と$G$自体だけを正規部分群として持つことを意味する。

説明

余剰類

余剰類のアイデアは、必然的に代数学をより高い次元に導く。

例えば、$3$の倍数だけを集めた集合$3 \mathbb{Z} = \left\{ \cdots, -6, -3, 0 , 3, 6 , \cdots\right\}$は群であり、特に$\mathbb{Z}$が可換群であるため、$3 \mathbb{Z} \triangleleft \mathbb{Z}$が成立する。

ここに整数を足すと考えてみると $$ \begin{align*} 1 + 3 \mathbb{Z} =& \left\{ \cdots, -5, -2, 1 , 4, 7 , \cdots\right\} \\ 2 + 3 \mathbb{Z} =& \left\{ \cdots, -4, -1, 2 , 5, 8 , \cdots\right\} \\ 3 + 3 \mathbb{Z} =& \left\{ \cdots, -3, 0 , 3, 6 , 9 , \cdots\right\} = 3 \mathbb{Z} \\ 4 + 3 \mathbb{Z} =& \left\{ \cdots, -2, 1 , 4, 7 , 10 , \cdots\right\} = 1 + 3 \mathbb{Z} \\ 5 + 3 \mathbb{Z} =& \left\{ \cdots, -1, 2 , 5, 8 , 11 , \cdots\right\} = 2 + 3 \mathbb{Z} \end{align*} $$ まるで$\pmod{3}$で整数を足すのと似た形になる。

つまり、$\mathbb{Z}_{3} : = \left\{ 3 \mathbb{Z} , 1 + 3 \mathbb{Z} , 2 + 3 \mathbb{Z}\right\}$のように集合を要素として持つ新しい群を考えることができるということだ。このような新たに作られる群を商群と言う。初めて勉強するときはかなり理解しづらい概念だが、通常は余剰類に対する誤解がその原因だ。取るに足らないように見えて使われないように見えるが、実際には手で書きながら余剰類をしっかり理解することが後の部分を楽にする。

指数

左と書かれているのも右と書かれているのも別に区別する必要がないからだる。本来、指数は左余剰類の数として定義されるが、実際には右余剰類と一対一の対応が存在するので、右余剰類の数として定義しても良い。2

正規性

$gH$と$Hg$が群になるか、$gH = Hg$が成り立つかを確認するのは、一見教科書で学んだ連続の定義を思い出させる。正規normalという言葉がついているだけに、かなり強力な条件であり、多くの便利な性質が推測できるだろう。

定義からすぐにわかる事実としては、$G$の単位元$e$に対して$\left\{ e \right\} \triangleleft G$がある。少し考えればわかるのは、可換群$G$に対して$H \leqslant G$ならば、$H \triangleleft G$程度があることだ。

単純性

例えば、素数$p$について、$\mathbb{Z}_{p}$は自明群や自分自身以外に部分群を持たないため、単純群となる。

参考文献


  1. Fraleigh. (2003). 『現代の抽象代数学』(第7版): p97, 101, 132, 149. ↩︎

  2. Fraleigh. (2003). 『現代の抽象代数学』(第7版): p103 ↩︎