完全弾性衝突と運動エネルギーの保存
定理
反発係数が $e$ が $1$ のとき、完全弾性衝突という。完全弾性衝突には重要な特徴が二つある。
(a) 衝突前後の各物体の運動エネルギー合計が保存される。
(b) 二つの物体の質量が同じなら、衝突後の速度が互いに交換される。
証明
(a)
運動量保存の法則により、
$$m_{1}v_{1}+m_2v_2 = m_{1}{v_{1}}^{\prime}+m_2{v_2}^{\prime}$$
$$\implies m_{1}v_{1} - m_{1}{v_{1}}^{\prime} = m_2{v_2}^{\prime} - m_2v_2$$
$$\begin{equation}\implies m_{1}(v_{1} - {v_{1}}^{\prime}) = m_2 ( {v_2}^{\prime}-v_2)\end{equation}$$
完全弾性衝突の場合、反発係数は $e=1$ なので、
$$e= \dfrac{ {v_2}^{\prime} - {v_{1}}^{\prime} }{ v_{1} - v_2 }=1$$
$$ \implies {v_2}^{\prime} - {v_{1}}^{\prime} = v_{1} - v_2 $$
$$\begin{equation} \implies v_{1} + {v_{1}}^{\prime} = v_2 + {v_2}^{\prime}\end{equation}$$
左辺に右辺に同じものをかけても、式は成り立つ。したがって、$(1)$の左辺、右辺に$(2)$の左辺、右辺をそれぞれかけると、
$$m_{1}(v_{1} - {v_{1}}^{\prime}) (v_{1} + {v_{1}}^{\prime}) = m_2 ({v_2}^{\prime} - v_2) ( {v_2}^{\prime} - v_2)$$
$$\implies m_{1}({v_{1}}^2 - {{v_{1}}^{\prime}}^2) = m_2 ( {{v_2}^{\prime}}^2 - {v_2}^2)$$
$$\implies \dfrac{1}{2}m_{1}{v_{1}}^2 - \dfrac{1}{2}m_{1}{{v_{1}}^{\prime}}^2 = \dfrac{1}{2}m_2{{v_2}^{\prime}}^2 -\dfrac{1}{2}m_2 {v_2}^2$$
$$\implies \dfrac{1}{2}m_{1}{v_{1}}^2 + \dfrac{1}{2}m_2 {v_2}^2= \dfrac{1}{2}m_{1}{{v_{1}}^{\prime}}^2 + \dfrac{1}{2}m_2{{v_2}^{\prime}}^2$$
つまり、衝突前後で各物体の運動エネルギー合計が保存される。
(b)
質量が同じ場合、$m_{1}=m_2$ であるため、$(1)$ は、
$$v_{1} - {v_{1}}^{\prime} = {v_2}^{\prime}-v_2$$
反発係数から出た式は、
$$v_{1} + {v_{1}}^{\prime} = v_2 + {v_2}^{\prime}$$
二つの式を足すと、
$$2v_{1} = 2{v_2}^{\prime}$$
$$\implies v_{1}={v_2}^{\prime}$$
二つの式を引くと、
$$2{v_{1}}^{\prime}=2v_2$$
$$\implies {v_{1}}^{\prime}=v_2$$
したがって、二つの物体の衝突前後の速度が交換される。