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量子力学の変分原理 📂量子力学

量子力学の変分原理

定理1

与えられた物理系の基底状態エネルギーを$E_{\text{gs}}$とする。系のハミルトニアン演算子$H$と規格化された任意の関数$\psi$に対して次が成り立つ。

$$ E_{\text{gs}} \le \braket{H} = \braket{\psi | H | \psi} $$

ここで$\braket{H}$は状態$\psi$における期待値である。これを変分原理variational principleという。

説明

変分原理は基底状態エネルギーを正確に求められないときに、それを近似する方法の一つである。

系のハミルトニアン$H$は分かっているが、シュレディンガー方程式が複雑で解けず基底状態エネルギーを求められないとする。このとき変分原理を用いると$E_{\text{gs}}$の上限upper boundが分かるので、基底状態エネルギーを大まかに見積もることができる。基底状態と適度に似ていると推定される波動関数$\psi$を試行関数として選び期待値を計算すると、その値がどれほど悪くても$E_{\text{gs}}$より小さくなることはないと保証されるためである。

$$ E_{\text{gs}} \le \braket{H} = \braket{\psi | H | \psi} $$

実際には調節可能なパラメータ$b$を含む試行波動関数$\psi_{b}$を取り、$\braket{H}$を$b$について最小化して可能な限り低い上限を得る。等号は$\psi$が実際の基底状態であるとき成り立つので、試行波動関数が基底状態に似ているほどより良い近似を得る。もちろん実際に基底状態とどれほど近いかは分からず、また基底状態を求めることにしか使えない。

証明

$H$はエルミート演算子であるからその固有関数の集合$\left\{ \psi_{n} \right\}$は🔒(26/07/18)完備集合である。すなわち任意の規格化された固有関数$\psi$を正規直交化された固有関数の線形結合で表すことができる。

$$ H \psi_{n} = E_{n} \psi_{n}, \qquad \braket{\psi_{m} | \psi_{n}} = \delta_{mn} $$

$$ \psi = \sum_{n} c_{n} \psi_{n} $$

$\psi$は規格化されているので係数は次を満たす。

$$ 1 = \braket{\psi | \psi} = \sum_{m} \sum_{n} c_{m}^{\ast} c_{n} \braket{\psi_{m} | \psi_{n}} = \sum_{n} \left| c_{n} \right|^{2} $$

一方$H$の期待値は次の通りである。

$$ \braket{H} = \braket{\psi | H | \psi} = \sum_{m} \sum_{n} c_{m}^{\ast} c_{n} E_{n} \braket{\psi_{m} | \psi_{n}} = \sum_{n} E_{n} \left| c_{n} \right|^{2} $$

ところが基底状態エネルギーは定義により最も低いエネルギー固有値であるから、すべての$n$に対して$E_{\text{gs}} \le E_{n}$である。$\left| c_{n} \right|^{2} \ge 0$であるから次を得る。

$$ \braket{H} = \sum_{n} E_{n} \left| c_{n} \right|^{2} \ge \sum_{n} E_{\text{gs}} \left| c_{n} \right|^{2} = E_{\text{gs}} \sum_{n} \left| c_{n} \right|^{2} = E_{\text{gs}} $$


  1. David J. Griffiths. 양자역학(Introduction to Quantum Mechanics, 권영준 역) (2nd Edition, 2006), p278-283 ↩︎