次元解析
定義1
次元解析dimensional analysisとは、異なる物理量を含む方程式において各項の次元が等しくなければならないという原理に基づいて方程式の正しさを検証したり新しい関係を導出したりする手法だ。
説明
式の検証
地球の半径を $R_{e}$、地球を回る人工衛星の軌道の半径を $r_{c}$、地球の重力加速度を $g$ とする。すると人工衛星の速度 $v_{c}$ に関する公式は以下のとおりだ。
$$ v_{c} = \left( \dfrac{g R_{e}^{2}}{r_{c}} \right)^{1/2} $$
速度の次元は $\mathsf{L}^{1}\mathsf{T}^{-1}$ で、右辺の次元を整理すると以下のとおりだ。
$$ \mathsf{L}^{1}\mathsf{T}^{-1} = \left( \dfrac{\mathsf{L}^{1}\mathsf{T}^{-2} \cdot \mathsf{L}^{2}}{\mathsf{L}^{1}} \right)^{1/2} = \left( \mathsf{L}^{2}\mathsf{T}^{-2} \right)^{1/2} = \mathsf{L}^{1}\mathsf{T}^{-1} $$
ゆえに左辺と右辺の次元が一致するため、上の式が間違ってはいないことがわかる。次元が一致するというのは式展開におかしなところがないという意味であって、それが示す物理的関係が実際に真であることを保証するものではない。すなわち、次元が不一致であればその式が誤っていることは確実だが、次元が一致するからといって必ずしもその式が真であるとは限らない。
物理的関係の導出
次元解析は物理量間の関係を導出するためにも使える。例えば長さが $\ell$ の糸に質量が $m$ の球が吊るされた単振り子を考える。糸の質量は無視する。球を平衡位置からわずかに持ち上げたとき、球が振り子運動をして振動する周期 $T$ はどの物理量によって決まるか?周期に影響を与えうる要素を考えてみる。まず糸の長さ $\ell$ と球の質量 $m$ がある。また振り子は重力により運動するため重力加速度 $g$ も考慮できる。すると周期 $T$ は以下のような形で表される。
$$ T \propto \ell^a m^b g^c $$
ここで $k$ は無次元定数だ。さて各項の次元を比較してみよう。
- $T$ の次元: $\mathsf{T}^1$
- $\ell$ の次元: $\mathsf{L}^1$
- $m$ の次元: $\mathsf{M}^1$
- $g$ の次元: $\mathsf{L}^1\mathsf{T}^{-2}$
したがって上式の次元は次のとおりだ。
$$ \mathsf{T}^1 = (\mathsf{L}^1)^a (\mathsf{M}^1)^b (\mathsf{L}^1\mathsf{T}^{-2})^c = \mathsf{L}^{a+c} \mathsf{M}^b \mathsf{T}^{-2c} $$
この式が成り立つためには両辺の次元の指数が等しくなければならないので、以下のような方程式を立てることができる。
- $\mathsf{L}$: $a + c = 0$
- $\mathsf{M}$: $b = 0$
- $\mathsf{T}$: $-2c = 1$
これらの方程式を解くと $a = \frac{1}{2}$、$b = 0$、$c = -\frac{1}{2}$ が得られる。ゆえに周期 $T$ は次のように表せる。
$$ T \propto \ell^{1/2} m^0 g^{-1/2} = \left( \dfrac{\ell}{g} \right)^{1/2} $$
このように次元解析により周期 $T$ は糸の長さ $\ell$ と重力加速度 $g$ のみに依存し、質量には無関係であることがわかる。特に長さの平方根に比例し、重力加速度の平方根に反比例する。球の質量 $m$ は周期に影響を与えない。実際に計算しても単振り子の周期は振り子の長さと重力加速度のみに依存することが確認できる。
関連項目
Grant R. Fowles and George L. Cassiday. Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p7-9. ↩︎
