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数学で形式的な和 📂レンマ

数学で形式的な和

定義

集合 $S = \left\{ s_{1}, s_{2}, \cdots , s_{n} \right\}$ と $\mathbb{F}$ に対して、以下の表記法を 形式的和formal sum と呼ぶ。

$$ \sum_{i} a_{i} s_{i} = a_{1} s_{1} + a_{2} s_{2} + \cdots + a_{n} s_{n}, \qquad \text{where } a_{i} \in \mathbb{F} $$

  • $S$ は 有限集合 でなくても差し支えない。
  • $\mathbb{F}$ は体でなくても差し支えない。

説明

$S$ はただの 集合 に過ぎず、いかなる 代数的構造 も持たないことに注意する。すなわち上の定義で現れる加法記号 $+$ は 二項演算 ではない。表現 $a_{1}s_{i} + \cdots + a_{n}s_{n}$ はそれ自体が全体で一つの対象であり、 $a_{i}$ と $s_{i}$ によって決定される何かである。言い換えれば本質的には $2n$ 個の $a_{i}$、$s_{i}$ によって区別される 順序対 に等しい。

$$ a_{1}s_{i} + \cdots + a_{n}s_{n} \equiv (a_{1},s_{1},a_{2},s_{2},\cdots,a_{n},s_{n}) $$

加法記号を用いる利点は、$\sum$ 記号を使って簡潔に表現できることである。

$$ \sum_{i} a_{i}s_{i} = (a_{1},s_{1},a_{2},s_{2},\cdots,a_{n},s_{n}) $$

また ベクトル空間 を考えると、集合 $S$ の元の 形式的和の集合 を次のように簡潔に表すこともできる。

$$ \operatorname{span} (S) = \left\{ \sum_{i} a_{i}s_{i} : a_{i} \in \mathbb{F}, s_{i} \in S \right\} $$

$\mathbb{F}S$ や $\mathbb{F}[S]$ のように表記することもある。上の式によって $S$ を 基底 と見なすことができ、 $\mathbb{F}[S]$ は $S$ から 生成 される形式的なベクトル空間とみなせる。形式的と呼ぶ理由は、$\mathbb{F}[S]$ 内の ベクトル 同士の実質的な加法が定義されているわけではないからである。

関連項目