量子力学における演算子の行列表現
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2次元空間の二つの単位ベクトルx=(1,0)とy=(0,1)を考えてみよう。空間内の任意の点(a,b)の座標ベクトルは、次のように二つの単位ベクトルの線形結合で表現できる。
(a,b)=a(1,0)+b(0,1)⟹[ab]=a[10]+b[01]
この表現が可能な理由は、単位ベクトルの集合{x,y}が次元の数だけ直交するベクトルを持っているからだ。このような集合を数学的に基底という。言い換えれば、基底が与えられると、それらの線形結合で空間内のすべてのベクトルを表現できるということだ。ある集合が基底になる条件は、要素の数が次元の数と同じであり、お互いに直交するベクトルで構成されていることだ。つまり、xやyのような単位ベクトルでなくてもいいということだ。
例えば、互いに直交する二つのベクトルv=(−1,2)とu=(2,1)を考えてみよう。そうすれば、点(a,b)の座標ベクトルは次のようになる。
(a,b)=5−a+2b(−1,2)+52a+b(2,1)⟹5−a+2b52a+b=5−a+2b[10]+52a+b[01]
基底内の各ベクトルの座標は順番に[10]、[01]であることがわかる。さて、任意の行列A=[acbd]が与えられているとしよう。この行列の1行2列の成分を得るためには、1番目の基底ベクトルの座標と2番目の基底ベクトルの座標をそれぞれAに掛けてやればいい。
[10][acbd][01]=b
1つ目の基底ベクトルを∣1⟩、2つ目の基底ベクトルを∣2⟩と表記すると、行列Aのij成分は次のように表記できる。
[Aij]=⟨i∣A∣j⟩
これをディラック表記という。上記内容の核心は四つだ。
- 互いに直交するベクトルを次元の数だけ持っていれば、それらの線形結合で全ての点を座標で表現できる。(このような集合を基底という)
- 基底によって点の座標が変わる。
- 基底内のi番目のベクトルの座標ベクトルは次の通り。
0⋮1⋮0←i-th row
- i番目の基底ベクトルの座標を∣i⟩と表記すれば、行列のij成分は次の通り。
[Aij]=⟨i∣A∣j⟩
説明
量子力学では、演算子の(互いに異なる固有値に対応する)固有関数はすべて直交する。つまり、固有関数の集合は基底になる。これらの座標ベクトルを用いると、演算子が固有関数に作用するのをまるで行列積のように表現できる。例えば、ハミルトニアン演算子Hについて次の固有値方程式が成立するとしよう。
H∣1⟩=h1∣1⟩H∣2⟩=h2∣2⟩
すると、上記の固有値方程式は以下の行列積で表現できる。
[h100h2][10]=[h10]=h1[10][h100h2][01]=[0h2]=h2[01]
したがって[h100h2]はハミルトニアンHに対応する行列だ。この行列の各成分を求める方法は、上で説明したように固有ベクトルを前後に掛けることだ。
[Hij]=⟨i∣H∣j⟩
例
調和振動子
エネルギー演算子:
H=ℏw210000⋮023000⋮002500⋮000270⋮000029⋮⋯⋯⋯⋯⋯
サダリ演算子:
a+=01000⋮00200⋮00030⋮00004⋮00000⋮⋯⋯⋯⋯⋯
a−=00000⋮10000⋮02000⋮00300⋮00040⋮⋯⋯⋯⋯⋯
角運動量演算子
ℓ=1のとき、
角運動量演算子:
Lz=ℏ10000000−1
Lx=2ℏ010101010,Ly=2ℏ0i0−i0i0−i0
サダリ演算子:
L+=ℏ000200020,L−=ℏ020002000