角運動量の同時固有函数と階梯演算子の関係
📂量子力学角運動量の同時固有函数と階梯演算子の関係
まとめ
角運動量演算子 L2と Lzの固有値を ℓ(ℓ+1)ℏ2と mℏ としよう。それぞれの固有値に対応する規格化された同時固有関数を∣ℓ,m⟩と言おう。
L2∣ℓ,m⟩Lz∣ℓ,m⟩=ℓ(ℓ+1)ℏ2∣ℓ,m⟩=mℏ∣ℓ,m⟩
角運動量のはしご演算子L±と固有関数∣ℓ,m⟩について、次のような関係式が成り立つ。
L+∣ℓ,m⟩L−∣ℓ,m⟩=(l−m)(l+m+1)ℏ∣ℓ,m+1⟩=(l+m)(l−m+1)ℏ∣ℓ,m−1⟩
説明
はしご演算子L±を∣ℓ,m⟩に適用すると、Lzに関する固有値方程式で固有値がℏだけ増加(減少)する。
Lz∣ℓ,m⟩=mℏℓ∣ℓ,m⟩⟹LzL+∣ℓ,m⟩=(m+1)ℏ∣ℓ,m+1⟩
したがって、L+∣ℓ,m⟩も固有値(m+1)ℏに対応する固有関数である。上の定理は、(m++1)に対応する固有関数の中から規格化された状態を∣ℓ,m+1⟩と言うとき、L+∣ℓ,m⟩と∣ℓ,m+1⟩の間の関係式について述べている。
証明
まず、Lzの固有値方程式から出発しよう。可能なmの値は1だけの差があるため、次のようになる。
Lz∣ℓ,m⟩Lz∣ℓ,m+1⟩=mℏ∣ℓ,m⟩=(m+1)ℏ∣ℓ,m+1⟩
また、L+はLzの固有値をℏだけ増加させるので、
LzL+∣ℓ,m⟩=(m+1)ℏL+∣ℓ,m⟩
つまり、∣ℓ,m+1⟩も固有値(m+1)ℏに対応する固有関数であり、L+∣ℓ,m⟩も固有値(m+1)ℏに対応する固有関数である。したがって、何かの定数C+に対して次のようになる。
L+∣ℓ,m⟩=C+∣ℓ,m+1⟩(1)
同じ方法で、L−に対して次の式を得る。
L−∣ℓ,m⟩=C−∣ℓ,m−1⟩(2)
このとき、(1)と(2)は固有値方程式ではないことに注意しよう。C+の値を求めるために、L+∣ℓ,m⟩の自己内積を求めよう。
⟨ψ∣L+∗L+∣ψ⟩=⟨ℓ,m+1∣C+∗C+∣ℓ,m+1⟩=∣C+∣2⟨ℓ,m+1∣ℓ,m+1⟩=∣C+∣2
はしご演算子の関係式
L−L+=L2−Lz2−ℏLz
一方、上記の式の左辺をそのまま計算すると次のようになる。
⟨ψ∣L+∗L+∣ψ⟩=⟨ℓ,m∣(L+)∗L+∣ℓ,m⟩=⟨ℓ,m∣L−L+∣ℓ,m⟩=⟨ℓ,m∣L2−Lz2−ℏLz∣ℓ,m⟩=[l(l+1)ℏ2−m2ℏ2−mℏ2]⟨ℓ,m∣ℓ,m⟩=ℏ2(ℓ2+ℓ−m2−m)=ℏ2[(ℓ2−m2)+(ℓ−m)]=ℏ2(ℓ−m)(ℓ+m+1)
したがって、次を得る。
C+=ℏ(ℓ−m)(ℓ+m+1)
同じ方法で計算して、C−を求めると次のようになる。
C−=ℏ(ℓ+m)(ℓ−m+1)