角運動量のラダー演算子
📂量子力学角運動量のラダー演算子
定義
各運動量演算子 Lzに対応するはしご演算子は次の通り。
L+:=Lx+iLyL−:=Lx−iLy
L+を昇演算子raising operator、L−を降演算子lowering operatorと呼ぶ。
説明
演算子の名前が昇/降である理由は、L±が各運動量演算子Lzの同時固有関数の状態stateを上げたり下げたりする働きをするため。L2およびLzの同時固有関数をψとし、演算子Lzの固有値方程式が下記のようであるとする。
Lzψ=μψ
この時、L±ψはψより固有値が±ℏ大きいLzの固有関数であることを次のように示せる。以下の性質(2)を用いると、
Lz(L±ψ)=(L±Lz±ℏL±)ψ=L±Lzψ±ℏL±ψ=L±μψ±ℏL±ψ=μL±ψ±ℏL±ψ=(μ±ℏ)L±ψ
一方、(3)によりL2の固有値は変わらないことがわかる。L2の固有値方程式がL2ψ=λψであるなら、
L2(L±ψ)=(L±L2)ψ=L±(L2ψ)=L±lλψ=λL±ψ
性質
はしご演算子に対して次の式が成り立つ。
L+L−L−L+L2[Lz,L±]LzL±[L2,L±]LxLy=L2−Lz2+ℏLz=L2−Lz2−ℏLz=L+L−+Lz2−ℏLz=L−L++Lz2+ℏLz=±ℏL±=L±Lz±ℏL±=0=21(L++L−)=−2i(L+−L−)
(1)は、L±がLzのはしご演算子になる条件。
証明
単純な計算で示せる。演算子の積では交換法則が一般的に成り立たないことに注意しよう。
L+L−=(Lx+iLy)(Lx−iLy)=Lx2+iLyLx−iLxLy+Ly2=Lx2+Ly2−i[Lx,Ly]=L2−Lz2+ℏLz
L−L+=(Lx−iLy)(Lx+iLy)=Lx2−iLyLx+iLxLy+Ly2=Lx2+Ly2+i[Lx,Ly]=L2−Lz2−ℏLz
上記の二つの結果から次のことが得られる。
L2=L+L−+Lz2−ℏLz=L−L++Lz2+ℏLz=L±L∓+Lz2∓ℏLz
各運動量演算子の交換関係
[Ly,Lz][Lz,Lx][L2,Lx]=iℏLx=iℏLy=[L2,Ly]=0
各運動量演算子の交換関係から以下のように計算される。
[Lz,L±]=[Lz,Lx±iLy]=[Lz,Lx]±i[Lz,Ly]=iℏLy±i(−iℏLx)=±ℏ(Lx±iLy)=±ℏL±
上記の結果から自然に次の式を得る。
LzL±=L±Lz±ℏL±
同様に下記の式も各運動量演算子の交換関係から得られる。
[L2,L±]=[L2,Lx±iLy]=[L2,Lx]±i[L2,Ly]=0
L+とL−を連立すると次のように得られる。
LxLy=21(L++L−)=−2i(Lx−L−)
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