不変部分空間と固有ベクトルの関係
定理1
$V$を $n$次元 の ベクトル空間、$T : V \to V$を 線形変換、$W \le V$を $T$-不変部分空間 とする。$v_{1}, \dots, v_{k}$を互いに異なる 固有値 に対応する $T$ の 固有ベクトル とする。もし $v_{1} + \cdots + v_{k} \in W$ なら、任意の $i$ に対して $v_{i} \in W$ である。
説明
$W$が 部分空間 であるから、$v_{i} \in W$ のとき $\sum_{i}v_{i} \in W$ であることは成り立つ。しかし逆は一般には成り立たない。本定理は $v_{i}$ が固有ベクトルである場合には逆も成り立つことを示す。
証明
数学的帰納法で証明する。
$k=1$ の場合
自明に $v_{1} \in W \implies v_{1} \in W$ である。
$k = m-1$ のとき成立すると仮定する
さて $k = m$ のとき、$v = v_{1} + \cdots v_{m} \in W$ が成り立つとしよう。すると $W$ は $T$-不変であるから、
$$ T(v) = T(v_{1} + \dots + v_{m}) = T(v_{1}) + \cdots T(v_{m}) = \lambda_{1}v_{1} + \cdots + \lambda_{m}v_{m} \in W $$
ここで $\lambda_{i}$ は互いに異なる固有値である。しかし($W$ が部分空間であるので)$\lambda_{m}v \in W$ であり次が成り立つ。
$$ T(v) - \lambda_{m}v = (\lambda_{1} - \lambda_{m})v_{1} + \cdots + (\lambda_{m-1} - \lambda_{m})v_{m-1} \in W $$
すると $k=m-1$ のとき成立するという仮定により次を得る。
$$ (\lambda_{1}-\lambda_{m})v_{1}, \dots, (\lambda_{m-1}-\lambda_{m})v_{m-1} \in W \implies v_{1}, \dots, v_{m-1} \in W $$
したがって、$W$ は部分空間であるから、次が成り立つ。
$$ v_{m} = v - v_{1} - \cdots - v_{m-1} \in W $$
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Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p234 ↩︎