可変質量系の運動方程式
概要1
物理では、多くの状況で質量を固定された定数として扱うことが多い。しかし、そうでない場合も多い。例えば、落ちる雨粒は、大気中の小さな水滴を吸収して質量が増加する。ロケットは燃料を燃やして噴出されるガスによって加速されるが、この時燃料が消費されるため、ロケットの質量は減少する。
公式
質量が増加しながら動く物体
物体が動きながら質量が増加する場合を考えよう。下の図のように、質量が大きい物体が小さな粒と衝突しながら、小さな粒が物体にくっつくと仮定しよう。
$t$の時の物体の質量と速度をそれぞれ$m(t), \mathbf{v}(t)$としよう。小さな粒の速度を$\mathbf{u}(t)$としよう。小さな時間間隔$\Delta t$後に物体が得た質量を$\Delta m$としよう。すると、$\Delta t$時間後の物体の質量は$m(t + \Delta t) = m(t) + \Delta m$で、速度は$\mathbf{v}(t + \Delta t) = v(t) + \Delta \mathbf{v}$だ。系の運動量を$\mathbf{p}$としよう。すると、
$$ \begin{align*} \mathbf{p}(t) &= m \mathbf{v} + \Delta m \mathbf{u} \\ \mathbf{p}(t + \Delta t) &= m(t + \Delta t) \mathbf{v}(t + \Delta t) = \left( m(t) + \Delta m \right) \left( \mathbf{v}(t) + \Delta \mathbf{v} \right) \end{align*} $$
ここで、$\Delta t$間の運動量の変化量は次のようになる。
$$ \begin{align*} \Delta \mathbf{p} &= \left( m + \Delta m \right) \left( \mathbf{v} + \Delta \mathbf{v} \right) - \left( m \mathbf{v} + \Delta m \mathbf{u} \right) \\ &= m \mathbf{v} + m\Delta \mathbf{v} + \Delta m \mathbf{v} + \Delta m \Delta \mathbf{v} - m \mathbf{v} - \Delta m \mathbf{u} \\ &= (m + \Delta m) \Delta \mathbf{v} + \Delta m (\mathbf{v} - \mathbf{u}) \\ \end{align*} $$
ここで、小さな粒の物体に対する相対速度を$\mathbf{V} = \mathbf{u} - \mathbf{v}$とすると、
$$ \Delta \mathbf{p} = (m + \Delta m) \Delta \mathbf{v} - \mathbf{V}\Delta m $$
今、両辺を$\Delta t$で割って、$\Delta t \to 0$の極限を取ると、次を得る。
$$ \mathbf{F}_{\text{ext}} = \dfrac{d \mathbf{p}}{dt} = m \dot{\mathbf{v}} - \mathbf{V}\dot{m} $$
ここで、$\mathbf{F}_{\text{ext}}$は重力、空気抵抗などの外力を表す。
小さな粒が静止している場合を考えよう。例えば、ある物体が霧の中を動く時、霧の中の水滴が静止しているとする。これは一般的に良い近似となる。すると、$\mathbf{V} = - \mathbf{v}$で、運動方程式は次のようになる。
$$ \mathbf{F}_{\text{ext}} = m \dot{\mathbf{v}} + \mathbf{v}\dot{m} $$
質量が減少しながら動く物体
上の結果と変わらない。ただし、この場合は質量が減少しているため、変化量は負でなければならない。
$$ \Delta m \lt 0 \quad \text{and} \quad \dot{m} \lt 0 $$
参照
Grant R. Fowles and George L. Cassiday, Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p312-313 ↩︎