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微分多様体のスカラー曲率 📂幾何学

微分多様体のスカラー曲率

定義1

リース表現定理

$\left( H, \left\langle \cdot,\cdot \right\rangle \right)$が内積空間だとしよう。$H$上の線形汎関数 $f \in H^{ \ast }$と$\mathbf{x} \in H$に対して、$f ( \mathbf{x} ) = \left\langle \mathbf{w} , \mathbf{x} \right\rangle$を満たす$\mathbf{w} \in H$が唯一存在する。

$M$を微分多様体だとしよう。$T_{p}M$を点$p\in M$での接ベクトル空間としよう。固定された$X \in T_{p}M$に対して$T_{p}M$の線形汎関数 $\Ric(X, \cdot)$を考える。この時$\Ric$はリッチ曲率である。すると、リース表現定理により、$Y$と$\Ric$に対して以下を満たす$Z$が唯一存在する。

$$ \Ric (X, Y) = g\left( Z, Y \right) $$

これから、このような$X, Z$に対して$K : T_{p} \to T_{p}M$を以下のように定義しよう。

$$ K(X) = Z $$

すると、

$$ \Ric (X, Y) = g\left( K(X), Y \right) $$

そして、点$p$でのスカラー曲率scalar curvature $K : M \to \mathbb{R} \text{ by } K(p) = K_{p}$を以下のように定義する。

$$ K_{p} = \text{Trace of } K $$

説明

$\left\{ X_{i} = \dfrac{\partial }{\partial x_{i}}\right\}$を$T_{p}M$の基底だとしよう。すると、トレースの内積表現により、

$$ K_{p} = \tr(K) = g(K(X_{i}), X_{j})g^{ij} = \Ric (X_{i}, X_{j}) g^{ij} = R_{ikj}^{k}g^{ij} $$

この時$R_{ikj}^{k} = R_{ikj}^{s}\delta_{s}^{k} = R_{ikj}^{s}g_{sl}g^{lk} = R_{ikjl}g^{lk}$であるから

$$ K_{p} = R_{ikj}^{k}g^{ij} = R_{ikjl}g^{lk}g^{ij} $$

したがって、リッチ曲率がリーマン曲率の第二、第四成分の平均であるように、スカラー曲率はリーマン曲率のすべての成分に対する平均である。特に$\left\{ Z_{i} \right\}$を$T_{p}M$の正規直交基底とすれば、$g^{ij} = \delta_{ij}$であるから

$$ K_{p} = \Ric(Z_{i}, Z_{j})\delta_{ij} = \Ric(Z_{i}, Z_{i}) = R(Z_{i}, Z_{j}, Z_{i}, Z_{j}) $$

が成立し、これは断面曲率 $K(Z_{i}, Z_{j})$の平均と同じである。


  1. Manfredo P. Do Carmo, Riemannian Geometry (Eng Edition, 1992), p97-98 ↩︎