基底の拡張と縮小
定理1
$S$を有限次元ベクター空間$V$の有限部分集合とする。
(a) $S$が$V$を生成しつつ$V$の基底ではない場合、$S$の要素を適切に削除して$V$の基底に縮小することができる。
(b) $S$が線形独立だが$V$の基底ではない場合、$S$に適切に要素を追加して$V$の基底に拡張することができる。
系
$W \le V$を$V$の$n$次元ベクター空間の部分空間とする。$\gamma = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{k} \right\}$を$W$の基底とする。すると、$\gamma$に適切な要素を追加して$V$の基底$\beta = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{k}, \mathbf{v}_{k+1}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}$に拡張できる。
証明
(a)
$\span(S) = V$だが、$S$が$V$の基底でない場合、それは$S$が線形従属であることを意味する。したがって、$S$のあるベクトル$\mathbf{v}_{1}$は他のベクトルの線形結合で表すことができる。加法/減法の定理により、$S \setminus \left\{ \mathbf{v}_{1} \right\}$も同様に$V$を生成する。$S \setminus {\mathbf{v}_{1}}$が線形独立なら証明は完了である。線形独立ではない場合、同じ論理で$V$を生成する$S \setminus \left\{ \mathbf{v}_{1}, \mathbf{v}_{2} \right\}$を考えることができる。この過程を繰り返すと、$S$から適切な要素を削除して$V$の基底となる集合を得る。
(b)
$\dim(V) = n$と仮定する。$S$が線形独立だが$V$の基底ではない場合、それは$S$が$V$を生成しないことを意味する。そして、加法/減法の定理により、あるベクトル$\mathbf{v}_{1} \notin \span(S)$を$S$に追加しても、$S \cup \left\{ \mathbf{v}_{1} \right\}$は引き続き線形独立である。この方法を繰り返して、要素の数が$n$である線形独立集合を$S$に適切なベクトルを追加して得ることができる。$n$次元ベクター空間で要素が$n$個の線形独立集合は基底であるため、証明は完了である。
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Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Aplications Version (12th Edition, 2019), p251-254 ↩︎