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双対空間によって定義される線形変換の転置 📂線形代数

双対空間によって定義される線形変換の転置

定理1

二つの有限次元 ベクター空間 $V, W$の順序基底をそれぞれ$\beta, \gamma$としよう。任意の線形変換 $T : V \to W$に対して、次のように定義された関数 $U$は線形変換であり、$[U]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}} = ([T]_{\beta}^{\gamma})^{t}$を満たす。

$$ U : W^{\ast} \to V^{\ast} \quad \text{ by } \quad U(g) = gT \quad \forall g \in W^{\ast} $$

ここで、$[T]_{\beta}^{\gamma}$は$T$の行列表現、${}^{t}$は行列の転置、$V^{\ast}$は$V$の双対空間、$\beta^{\ast}$は$\beta$の双対基底である。

定義

上の定理による線形変換 $U$を$T$の転置transposeと呼び、$T^{t}$と表記する。

説明

$T$の行列表現の転置行列が$U$の行列表現であるため、これを$T^{t}$と表記し、転置と呼ぶのは非常に自然である。

$$ [T^{t}]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}} = ([T]_{\beta}^{\gamma})^{t} $$

一方で定義から、$gT$は$g$と$T$の合成である。$T : V \to W$が与えられており、$W^{\ast} \ni g : W \to \mathbb{R}$だから、$gT(x) = g(T(x))$である。

証明

任意の$g \in W^{\ast}$に対して、$g : W \to \mathbb{R}$と$T : V \to W$だから、$U(g) = gT : V \to \mathbb{R}$であり$gT \in V^{\ast}$である。したがって、$U : W^{\ast} \to V^{\ast}$である。

二つの順序基底を$\beta = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}, \gamma = \left\{ \mathbf{w}_{1}, \dots, \mathbf{w}_{m} \right\}$としよう。それぞれの双対基底を$\beta^{\ast} = \left\{ f_{1}, \dots, f_{n} \right\}, \gamma^{\ast} = \left\{ g_{1}, \dots, g_{m} \right\}$としよう。表記の便宜上$A = [T]_{\beta}^{\gamma}$としよう。行列表現を見つけるには、どのように各基底がマッピングされるかを見ればいい。 そこで、$[U]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}}$の$j$番目の列を見つけるために、$U(g_{j})$を計算してみよう。

双対空間と双対基底

$\beta = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}$を$X$の順序基底、$\beta^{\ast} = \left\{ f_{1}, \dots, f_{n} \right\}$を$X^{\ast}$の双対基底としよう。すると、$f \in X^{\ast}$に対して、

$$ f = \sum_{i=1}^{n}f(\mathbf{v}_{i})f_{i} $$

双対空間の性質と$g_{j}T \in V^{\ast}$によって、

$$ U(g_{j}) = g_{j}T = \sum_{s}(g_{j}T)(\mathbf{v}_{s})f_{s} $$

$$ [U(g_{j})]_{\beta^{\ast}} = \begin{bmatrix} (g_{j}T)(\mathbf{v}_{1}) \\ (g_{j}T)(\mathbf{v}_{2}) \\ \vdots \\ (g_{j}T)(\mathbf{v}_{n})\end{bmatrix} $$

したがって、$U$の行列表現 $[U]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}}$は、

$$ [U]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}} = \begin{bmatrix} (g_{1}T)(\mathbf{v}_{1}) & (g_{2}T)(\mathbf{v}_{1}) & \cdots & (g_{n}T)(\mathbf{v}_{1}) \\ (g_{1}T)(\mathbf{v}_{2}) & (g_{2}T)(\mathbf{v}_{2}) & \cdots & (g_{n}T)(\mathbf{v}_{2}) \\ \vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\ (g_{1}T)(\mathbf{v}_{n}) & (g_{2}T)(\mathbf{v}_{n}) & \cdots & (g_{n}T)(\mathbf{v}_{n}) \end{bmatrix} $$

しかし、各成分を計算してみると、

$$ \begin{align*} (g_{j}T)(\mathbf{v}_{i}) = g_{j}(T(\mathbf{v}_{i})) &= g_{j}\left( \sum_{k}^{m} A_{ki}\mathbf{w}_{k} \right) \\ &= \sum_{k}^{m} A_{ki} g_{j}(\mathbf{w}_{k}) \\ &= \sum_{k}^{m} A_{ki} \delta_{jk} \\ &= A_{ji} \end{align*} $$

したがって、$[U]_{\gamma^{\ast}}^{\beta^{\ast}} = ([T]_{\beta}^{\gamma})^{t}$が成立する。


  1. Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p121-122 ↩︎