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ベクトル場のリー括弧 📂幾何学

ベクトル場のリー括弧

定義1

微分多様体 $M$ における二つの微分可能なベクトル場 $X, Y$に対して、$[X, Y]$を以下のように定義し、(リー-)ブラケット(Lie-)bracket、リー演算またはリー代数Lie-algebraと呼ぶ。

$$ \begin{equation} [X, Y] := XY - YX \end{equation} $$

説明

ベクトル場 $X, Y$は、$\mathcal{D}(M)$に作用するオペレーターと見ることができ、$XY$はベクトル場にならないが、$[X, Y] = XY - YX$はベクトル場になる。

$(1)$のような式を満たす$[\cdot, \cdot]$は一般に交換子commutatorと呼ばれる。

以下の定理では(a)、(b)、(c)は、リー・ブラケットでなくても、交換子であれば一般的に満たされる性質である。特に(c)ヤコビ恒等式Jacobi identityと呼ばれる。

定理

$X, Y, Z$を$M$上の微分可能なベクトル場とする。$a, b$を実数、$f, g$を$M$上の微分可能な関数とする。すると、以下が成立する。

(a) $[X, Y] = -[Y, X]$

(b) $[aX + bY, Z] = a[X, Y] + b[Y, Z]$

(c) $[ [X, Y], Z] + [ [Y, Z], X] + [ [Z, X], Y] = 0$

(d) $[fX, gY] = fg[X, Y] + fX(g)Y - gY(f)X$

証明

(d)

積の微分$X(gY) = X(g)Y + gXY$が成立するため、

$$ \begin{align*} [fX, gY] &= fX(gY) - gY(fX) \\ &= \left( fX(g)Y + fgXY \right) - \left( gY(f)X - gfYX \right) \\ &= fgXY - fgYX + fX(g)Y + gY(f)X\\ &= fg(XY - YX) + fX(g)Y + gY(f)X\\ &= fg[X, Y] + fX(g)Y + gY(f)X \end{align*} $$


  1. Manfredo P. Do Carmo, Riemannian Geometry (Eng Edition, 1992), p27-28 ↩︎