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微分幾何学における直線(測地線)の定義 📂幾何学

微分幾何学における直線(測地線)の定義

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曲面$M \subset \mathbb{R}^{3}$の上である曲線に沿って動く対象があるとしよう。全体の空間$\mathbb{R}^{3}$で見た時にその線が曲がっているとしても、曲面上で動く対象は自分自身がまっすぐ前に進んでいると考えることができる。すると、このような線を曲面上の直線(ジオデシック)と定義することができる。まず、平面上の直線straight curveが持つ性質を考えてみよう。

  1. 曲率が$0$である。
  2. 二点間の最短距離である。
  3. 任意の$p, q$があれば、二点を結ぶ唯一の直線が存在する。
  4. 加速度と接線が平行である。

4.は1.から来るが、$\alpha^{\prime \prime} = v^{\prime} \mathbf{T} + v^{2}\kappa \mathbf{N}$で$\kappa = 0$であれば加速度と接線が平行である。

曲面上の直線という概念を定義するために、「1. 曲率が0」という点に注目してみよう。局所的に見た時に曲面は接平面と同じと考えることができる。だから、曲面上にいる対象の基準で見た時に、曲線が曲がっていないように見えれば、接平面で曲がっていなければいい。曲面上の曲線の曲率を示す式は次のようである。

$$ \kappa \mathbf{N} = \mathbf{T}^{\prime} = \alpha^{\prime \prime} = \kappa_{n}\mathbf{n} + \kappa_{g}\mathbf{S} $$

ここで$\mathbf{S}$が接平面上のベクトルであるため、この方向の曲率が$0$であれば、それは接平面で感じる曲率が$0$であるということと同じだろう。だから、曲面上の直線を次のように定義しよう。

定義

曲面$M$上の単位速度曲線$\gamma : I \to M$の測地曲率$\kappa_{g}$がどこでも$0$であれば、$\gamma$を測地線geodesic, 直線という。

$$ \gamma \text{ is geodesic} \iff k_{g} = 0 $$

定理

曲面$M$の単位速度曲線$\gamma$があるとする。$\gamma$が曲面$M$上の単位速度曲線だとする。$\gamma$が測地線であるための必要十分条件は次のものである。

(a)

$$ \gamma \text{ is geodesic} \iff \left[ \mathbf{n}, \mathbf{T}, \mathbf{T}^{\prime} \right] = 0 $$ $\mathbf{x}$を単純曲面とする。すると、$\gamma$を$\gamma (s) = \mathbf{x} \left( \gamma^{1}(s), \gamma^{2}(s) \right)$のように表すことができる。すると、次が成り立つ。

(b)

$$ \gamma \text{ is geodesic} \iff (\gamma^{k})^{\prime \prime} + \sum \limits_{i=1}^{2} \sum \limits_{j=1}^{2} {\Gamma _{ij}}^{k} (\gamma^{i})^{\prime} (\gamma^{j})^{\prime} = 0, \quad \forall k=1,2 $$

(c)

$$ \gamma \text{ is geodesic} \iff \gamma ^{\prime \prime}\text{ is normal to } M \text{ at every point.} $$

証明

(a)

$\kappa_{g} = \left[ \mathbf{n}, \mathbf{T}, \mathbf{T}^{\prime} \right]$が成り立つので、成立する。

(b)

まず、次の式が成り立つ。

$$ \kappa_{g}\mathbf{S} = \sum_{k=1}^{2} \left( (\gamma^{k})^{\prime \prime} + \sum\limits_{i,j}^{2} \Gamma_{ij}^{k} (\gamma^{i})^{\prime} (\gamma^{j})^{\prime} \right) \mathbf{x}_{k} $$

$\gamma$が測地線だと、$\mathbf{x}_{k}$の成分で括弧内の値が全て$0$であるため、上の式はゼロベクトルであり、$\kappa_{g}$である。逆に、$\kappa_{g}=0$であれば、上のベクトルの全成分が$0$であるため、成立する。

これは加速度の接空間成分が$0$であるということであり、$\gamma$が曲面上で等速運動をしているという意味である。

(c)

(b)の結果により、

$$ \gamma ^{\prime \prime} = \kappa_{n} \mathbf{n} + \kappa_{g}\mathbf{S} = \kappa_{n}\mathbf{n} \perp M $$


  1. Richard S. Millman and George D. Parker, Elements of Differential Geometry (1977), p109-110 ↩︎

  2. 金康泰, リーマン幾何学 (2015), p25 ↩︎