逆問題とは何か?
定義
式で表される物理現象がある時、原因により式を解き結果に関する情報を探すプロセスを 直接問題または順問題と言う。
逆に、結果に関する情報から原因に関する情報を探すプロセスを 逆問題と言う。
説明
多くの問題は直接問題で、例えば初速度が$v_{0}$の物体が$\theta$の射角で放物線運動をする時、水平到達距離を求めるのがそうだ。ここで逆問題は水平到達距離が分かった時、初速度と射角を求めることになる。
微分方程式
次のような波動方程式の初期値問題を考えよう。
$$ \begin{cases} \Delta u - u_{tt} = 0 &\text{in } \mathbb{R}^{n} \times (0, \infty) \\ u = f, u_{t} = 0 &\text{on } \mathbb{R}^{n} \times \left\{ t=0 \right\} \end{cases} $$
ここで初期値問題を解くこと、つまり初期値$f$が与えられた時の解$y$を求めることが直接問題だ。逆に何かの解$y$が与えられたとした時、初期値$f$を求めることが逆問題だ。
もし初期値$f$によって解$y$が一意に決まるならば、上の初期値問題自体を一つの作用素と見て$W f = y$のように表現できる。そうすると、与えられた波動方程式の逆問題を解くということは、$f = W^{-1}y$を満たす逆作用素$W^{-1}$を見つけることと同じだ。そうすれば、解$y$を知るたびに、初期値$f$が分かるようになる。
積分方程式
$$ a = \int_{x_{0}}^{x_{1}} f(x)dx $$
上のような積分式の中で、関数$f$が与えられるたびに定積分$a$を計算することが直接問題だ。逆に積分値$a$が与えられた時にその式を満たす関数$f$を見つけることが逆問題だ。見れば分かる通り、積分方程式は解くのがとても難しい。
音を聞いて太鼓の形が分かるか?
有名な例として、数学者Mark Kacが1966年に発表した論文Can One Hear the Shape of a Drum?で扱っているテーマの一つで、音から太鼓の形を当てる問題がある。太鼓の形を原因(初期値)とするならば、音は結果(解)となるので、太鼓の音を聞いて形を知ることは逆問題と言える。