デル演算子を含むベクトル積分の様々な公式
📂数理物理学デル演算子を含むベクトル積分の様々な公式
公式
T,Uをスカラー関数、vをベクトル関数としよう。それでは、次の式が成り立つ。
∫V(∇T)dτ=∮STda
∫V(∇×v)dτ=−∮Sv×da
∫V[T∇2U+(∇T)⋅(∇U)]dτ=∮S(T∇U)⋅da
∫V(T∇2U−U∇2T)dτ=∮S(T∇U−U∇T)⋅da
∫S∇T×da=−∮PTdl
説明
上の公式を証明するのは、グリフィスの電磁気学 第4版 第1章 61番の練習問題だ。
(3),(4)はグリーンの定理とも呼ばれる。
証明
以下の全ての証明で、cは定数ベクトルを意味している。
(1)
発散定理
∫V(∇⋅v)dτ=∮Sv⋅da
発散定理にv=Tcを代入しよう。
∫V∇⋅(Tc)dτ=∮S(Tc)⋅da
すると、積の法則 ∇⋅(fA)=f(∇⋅A)+A⋅(∇f)により、左辺は以下のように書き換えられる。
∫VT(∇⋅c)dτ+∫Vc⋅(∇T)dτ=∮S(Tc)⋅da
この時、左辺の第1項でcが定数ベクトルであるため、∇⋅c=0である。したがって、
⟹⟹∫Vc⋅(∇T)dτ=c⋅∫V(∇T)dτ=∫V(∇T)dτ= ∮S(Tc)⋅da c⋅∮STda ∮STda
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(2)
発散定理
∫V(∇⋅v)dτ=∮Sv⋅da
発散定理にv=v×cを代入しよう。
∫V∇⋅(v×c)dτ=∮S(v×c)⋅da
すると、積の法則 ∇⋅(A×B)=B⋅(∇×A)−A⋅(∇×B)により、左辺は以下のように書き換えられる。
∫Vc⋅(∇×v)dτ−∫Vv⋅(∇×c)dτ=∮S(v×c)⋅da
この時、左辺の第2項でcが定数ベクトルであるため、∇×c=0である。したがって、
∫Vc⋅(∇×v)dτ=∮S(v×c)⋅da
また、スカラー三重積公式と外積の性質により、次が成り立つ。
(v×c)⋅da=(da×v)⋅c=−(v×da)⋅c=−c⋅(v×da)
これを先の式の右辺に代入すると、
⟹⟹∫Vc⋅(∇×v)dτ=c⋅∫V(∇×v)dτ=∫V(∇×v)dτ= −∮Sc⋅(v×da) −c⋅∮Sv×da −∮Sv×da
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(3)
発散定理
∫V(∇⋅v)dτ=∮Sv⋅da
発散定理にv=T∇Uを代入しよう。
∫V∇⋅(T∇U)dτ=∮S(T∇U)⋅da
すると、積の法則 ∇⋅(fA)=f(∇⋅A)+A⋅(∇f)により、左辺は以下のように書き換えられる。
∫V[T∇⋅(∇U)+∇U⋅(∇T)]dτ=∮S(T∇U)⋅da
グラディエントのダイバージェンスはラプラシアン ∇2=∇⋅∇なので、
∫V[T∇2U+(∇T)⋅(∇U)]dτ=∮S(T∇U)⋅da
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(4)
(3)の式は以下のように書ける。
∫V(∇T)⋅(∇U)dτ=∮S(T∇U)⋅da−∫VT∇2Udτ
ここで、TとUを入れ替えると、以下のようになる。
∫V(∇U)⋅(∇T)dτ=∮S(U∇T)⋅da−∫VU∇2Tdτ
両方の式から差し引くと、以下のようになる。
0=(∮S(T∇U)⋅da−∫VT∇2Udτ)−(∮S(U∇T)⋅da−∫VU∇2Tdτ)
整理すると、
∫V(T∇2U−U∇2T)dτ=∮S(T∇U−U∇T)⋅da
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(5)
ストークスの定理
∫S(∇×v)⋅da=∮Pv⋅dl
ストークスの定理にv=Tcを代入しよう。
∫S[∇×(Tc)]⋅da=∮P(Tc)⋅dl
すると、積の法則 ∇×(fA)=f(∇×A)−A×(∇f)により、左辺は以下のように書ける。
∫ST(∇×c)⋅da−∫S[c×(∇T)]⋅da=∮P(Tc)⋅dl
この時、左辺の第1項でcが定数ベクトルであるため、∇×c=0である。したがって、
∫S[c×(∇T)]⋅da=−∮P(Tc)⋅dl
また、スカラー三重積公式により、次が成り立つ。
(c×∇T)⋅da=(∇T×da)⋅c
したがって、
⟹⟹∫S(∇T×da)⋅c=−∮P(Tc)⋅dlc⋅∫S(∇T×da)=−c⋅∮PTdl∫S(∇T×da)=−∮PTdl
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