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線形変換の合成 📂線形代数

線形変換の合成

定義1

線形変換$T_{1} : V \to W$と$T_{2} : W \to Z$が与えられたとする。次に定義される変換$T_{2} T_{1}$を$T_{1}$と$T_{2}$の合成composition of $T_{2}$ with $T_{1}$と呼ぶ。

$$ (T_{2} \circ T_{1})(\mathbf{x}) = T_{2}\left( T_{1}(\mathbf{x}) \right) \quad \mathbf{x} \in V $$

説明

線形変換の合成は、記号を省略して次のように表すことが多い。

$$ T_{2}T_{1}\mathbf{x} = (T_{2} \circ T_{1}) (\mathbf{x}) $$

有限次元では、これは本質的に行列の積と同じなので、自然な表記法である。

性質1 2

線形変換$T_{1} : V \to W$と$T_{2} : W \to Z$が与えられたとする。

(a) $T_{1}$と$T_{2}$の合成$T_{2} T_{1}$も線形変換である。

(b) $T, U_{1}, U_{2} \in \href{../3283}{L(V)}$と$a \in \mathbb{R}$に対して、次のことが成り立つ。

$$ T(U_{1} + U_{2}) = TU_{1} + TU_{2} \quad \text{and} \quad (U_{1} + U_{2})T = U_{1}T + U_{2}T \\[0.5em] T(U_{1}U_{2}) = (T_{1})U_{2} \\[0.5em] TI = IT = T \\[0.5em] a(U_{1}U_{2}) = (aU_{1})U_{2} = U_{1}(aU_{2}) $$

$T_{1}, T_{2}$が一対一であれば、次が成り立つ。

(c) $T_{2} T_{1}$が一対一である。

(d) $(T_{2} T_{1})^{-1} = T_{1}^{-1} T_{2}^{-1}$

(e) $V, W, Z$を有限次元ベクトル空間、$\alpha, \beta, \gamma$をそれぞれの順序基底とする。そして、$T : V \to W$、$U : W \to Z$を線形変換とする。すると、

$$ [UT]_{\alpha}^{\gamma} = [U]_{\beta}^{\gamma}[T]_{\alpha}^{\beta} $$

$[T]_{\alpha}^{\beta}$は$T$の行列表現である。

証明

(a)

$\mathbf{x}_{1}, \mathbf{x}_{2} \in V$と任意の定数を$k$とする。$T_{1}, T_{2}$が線形であるので、次が成り立つ。

$$ \begin{align*} (T_{2} T_{1})(\mathbf{x}_{1} + k \mathbf{x}_{2}) &= T_{2} \left( T_{1} \left( \mathbf{x}_{1} + k \mathbf{x}_{2} \right) \right) \\ &= T_{2} \left( T_{1} ( \mathbf{x}_{1} ) + k T_{1} ( \mathbf{x}_{2} ) \right) \\ &= T_{2} \left( T_{1} ( \mathbf{x}_{1} ) \right) + k T_{2}\left( T_{1} ( \mathbf{x}_{2} ) \right) \\ &= (T_{2} T_{1}) ( \mathbf{x}_{1} ) + k (T_{2} T_{1})( \mathbf{x}_{2} ) \end{align*} $$

(c)

$\mathbf{x}_{1}$と$\mathbf{x}_{2}$が$V$の異なるベクトルであるとする。$T_{1}$が一対一なので、$T_{1}(\mathbf{x}_{1})$と$T_{1}(\mathbf{x}_{2})$は異なるベクトルである。したがって、$T_{2}$も一対一なので、次の2つのベクトルも異なる。

$$ (T_{2} T_{1})(\mathbf{x}_{1}) = T_{2} \left( T_{1}(\mathbf{x}_{1}) \right) \quad \text{and} \quad (T_{2} T_{1})(\mathbf{x}_{2}) = T_{2} \left( T_{1}(\mathbf{x}_{2}) \right) $$

したがって、$T_{2} T_{1}$は一対一である。

(d)

$\mathbf{z}$を$T_{2} T_{1}$による$\mathbf{x} \in V$の像とする。

$$ \mathbf{z} = (T_{2} T_{1}) ( \mathbf{x} ) = T_{2} ( T_{1} (\mathbf{x})) $$

両辺に$T_{2}^{-1}$を適用すると、次のようになる。

$$ T_{2}^{-1}(\mathbf{z}) = ( T_{2}^{-1} T_{2} T_{1}) ( \mathbf{x} ) = T_{1} (\mathbf{x}) $$

さらに両辺に$T_{1}^{-1}$を適用すると、次のようになる。

$$ ( T_{1}^{-1} T_{2}^{-1} )(\mathbf{z}) = ( T_{1}^{-1} T_{1} ) ( \mathbf{x} ) = \mathbf{x} $$

したがって、次を得る。

$$ (T_{1}^{-1} T_{2}^{-1}) ( (T_{2} T_{1} )(\mathbf{x}) ) = \mathbf{x} $$


  1. Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Aplications Version (12th Edition, 2019), p465-468 ↩︎ ↩︎

  2. Stephen H. Friedberg, Linear Algebra (4th Edition, 2002), p86-89 ↩︎