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線形変換が全射および単射であるための必要十分条件 📂線形代数

線形変換が全射および単射であるための必要十分条件

定理11

線形変換 $T: V \to W$について、以下の二つの命題は同値である。

  • $T$が一対一である。
  • $N(T) = \text{ker}(T) = \left\{ \mathbf{0} \right\}$

説明

これは、$T$のを理解することが、$T$が一対一かどうかを判断する方法であるということである。この定理により、線形変換が一対一であることは、次の条件と同値である。

$$ \mathbf{x} \ne \mathbf{0} \implies T(\mathbf{x}) \ne \mathbf{0} $$

証明

  • $(\implies)$

    $T$が一対一と仮定しよう。$T$が線形変換であるため、次が成り立つ。

    $$ T(\mathbf{0})=\mathbf{0} $$

    しかし、$T$が一対一と仮定したので、上記の式を満たす$V$の要素は$\mathbf{0}$が唯一である。したがって、次が成り立つ。

    $$ \text{ker}(T) = \left\{ \mathbf{0} \right\} $$

  • $(\impliedby)$

    $\text{ker}(T) = \left\{ \mathbf{0} \right\}$と仮定しよう。$\mathbf{u}, \mathbf{v} \in V$を異なるベクトルとしよう。したがって、$\mathbf{u} - \mathbf{v} \ne \mathbf{0}$である。すると仮定により、次が成り立つ。

    $$ T(\mathbf{u}) - T(\mathbf{v}) = T(\mathbf{u} - \mathbf{v}) \ne \mathbf{0} $$

    したがって、次を得る。

    $$ \mathbf{u} \ne \mathbf{v} \implies T(\mathbf{u}) - T(\mathbf{v}) $$

    よって、$T$は一対一である。

定理2

線形変換 $T: V \to V$において、$V$が有限次元である場合、以下の命題は同値である。

  • $T$が一対一である。
  • $N(T) = \text{ker}(T) = \left\{ \mathbf{0} \right\}$
  • $T$が全射である。つまり、$T$の値域が$V$と同じである。$R(T)=V$

説明

これは、$V$が有限次元であり、$W=V$である定理1の特別なケースである。最初の二つの命題が同値であることは定理1で証明されたので、第一と第三の命題が同値であることを証明する。

証明2

$S = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}$を$V$の基底としよう。すると、全ての$T(\mathbf{v})$は、$T(\mathbf{v}_{i})$の線形変換として表されるため、セット$Q$が$R(T)$を生成することがわかる。

$$ Q = \left\{ T(\mathbf{v}_{1}),\dots T(\mathbf{v}_{n}) \right\} $$

ここで、$Q$の要素の数が$\dim(V)=n$であるため、$Q$が線形独立であることは、$Q$が$V$を生成することと同値である。しかし、$Q$が$R(T)$を生成するので、$Q$が線形独立であることを示すことは$R(T)=V$を示すことと同じである。よって、証明は次のことを証明することに変わる。

$T$が一対一である $\iff$ $Q$が線形独立である
  • $(\implies)$

    $T$が一対一であると仮定しよう。そして、定数$c_{i}$が次の方程式を満たすとしよう。

    $$ \begin{equation} c_{1}T(\mathbf{v}_{1}) + c_{2}T(\mathbf{v}_{2}) + \cdots + c_{n}T(\mathbf{v}_{n}) = \mathbf{0} \label{1} \end{equation} $$

    すると、$T$が線形変換であるため、次が成り立つ。

    $$ T (c_{1}\mathbf{v}_{1} + \cdots + c_{n}\mathbf{v}_{n}) = \mathbf{0} $$

    $T$が一対一であると仮定したので、定理1により、上記の方程式を満たす$\sum c_{i}\mathbf{v}_{i}$は$\mathbf{0}$だけである。

    $$ c_{1}\mathbf{v}_{1} + \cdots + c_{n}\mathbf{v}_{n} = \mathbf{0} $$

    しかし、$\mathbf{v}_{i}$は基底の要素であるので、上記の方程式を満たす定数は$0$だけである。

    $$ c_{1}=c_{2}=\cdots=c_{n}=0 $$

    したがって、$\eqref{1}$を満たす定数が$0$だけであるため、$Q$は線形独立である。

  • $(\impliedby)$

    $Q$が線形独立であると仮定しよう。そして、定数$c_{i}$が次の方程式を満たすとしよう。

    $$ c_{1}T(\mathbf{v}_{1}) + c_{2}T(\mathbf{v}_{2}) + \cdots + c_{n}T(\mathbf{v}_{n}) = \mathbf{0} $$

    すると、仮定により、上記の方程式を満たす定数は$0$だけであることがわかる。

    $$ \begin{equation} c_{1}=c_{2}=\cdots=c_{n}=0 \label{2} \end{equation} $$

    しかし、$T$が線形変換であるため、次が成り立つ。

    $$ T(c_{1}\mathbf{v}_{1} + \cdots + c_{n}\mathbf{v}_{n}) = c_{1}T(\mathbf{v}_{1}) + c_{2}T(\mathbf{v}_{2}) + \cdots + c_{n}T(\mathbf{v}_{n}) = \mathbf{0} $$

    すると、$\eqref{2}$により、上記の方程式を満たす$\sum c_{i}\mathbf{v}_{i}$は$\mathbf{0}$だけである。

    $$ T(\mathbf{0}) = T(0\mathbf{v}_{1} + \cdots + 0\mathbf{v}_{n}) = \mathbf{0} $$

    よって、定理1により、$T$は一対一である。


  1. Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Aplications Version (12th Edition, 2019), p460-462 ↩︎

  2. Walter Rudin, Principles of Mathmatical Analysis (3rd Edition, 1976), p207 ↩︎