線形変換が全射および単射であるための必要十分条件
📂線形代数線形変換が全射および単射であるための必要十分条件
定理1
線形変換 T:V→Wについて、以下の二つの命題は同値である。
- Tが一対一である。
- N(T)=ker(T)={0}
説明
これは、Tの核を理解することが、Tが一対一かどうかを判断する方法であるということである。この定理により、線形変換が一対一であることは、次の条件と同値である。
x=0⟹T(x)=0
証明
(⟹)
Tが一対一と仮定しよう。Tが線形変換であるため、次が成り立つ。
T(0)=0
しかし、Tが一対一と仮定したので、上記の式を満たすVの要素は0が唯一である。したがって、次が成り立つ。
ker(T)={0}
■
(⟸)
ker(T)={0}と仮定しよう。u,v∈Vを異なるベクトルとしよう。したがって、u−v=0である。すると仮定により、次が成り立つ。
T(u)−T(v)=T(u−v)=0
したがって、次を得る。
u=v⟹T(u)−T(v)
よって、Tは一対一である。
■
定理2
線形変換 T:V→Vにおいて、Vが有限次元である場合、以下の命題は同値である。
- Tが一対一である。
- N(T)=ker(T)={0}
- Tが全射である。つまり、Tの値域がVと同じである。R(T)=V
説明
これは、Vが有限次元であり、W=Vである定理1の特別なケースである。最初の二つの命題が同値であることは定理1で証明されたので、第一と第三の命題が同値であることを証明する。
証明
S={v1,…,vn}をVの基底としよう。すると、全てのT(v)は、T(vi)の線形変換として表されるため、セットQがR(T)を生成することがわかる。
Q={T(v1),…T(vn)}
ここで、Qの要素の数がdim(V)=nであるため、Qが線形独立であることは、QがVを生成することと同値である。しかし、QがR(T)を生成するので、Qが線形独立であることを示すことはR(T)=Vを示すことと同じである。よって、証明は次のことを証明することに変わる。
Tが一対一である ⟺ Qが線形独立である(⟹)
Tが一対一であると仮定しよう。そして、定数ciが次の方程式を満たすとしよう。
c1T(v1)+c2T(v2)+⋯+cnT(vn)=0
すると、Tが線形変換であるため、次が成り立つ。
T(c1v1+⋯+cnvn)=0
Tが一対一であると仮定したので、定理1により、上記の方程式を満たす∑civiは0だけである。
c1v1+⋯+cnvn=0
しかし、viは基底の要素であるので、上記の方程式を満たす定数は0だけである。
c1=c2=⋯=cn=0
したがって、(1)を満たす定数が0だけであるため、Qは線形独立である。
■
(⟸)
Qが線形独立であると仮定しよう。そして、定数ciが次の方程式を満たすとしよう。
c1T(v1)+c2T(v2)+⋯+cnT(vn)=0
すると、仮定により、上記の方程式を満たす定数は0だけであることがわかる。
c1=c2=⋯=cn=0
しかし、Tが線形変換であるため、次が成り立つ。
T(c1v1+⋯+cnvn)=c1T(v1)+c2T(v2)+⋯+cnT(vn)=0
すると、(2)により、上記の方程式を満たす∑civiは0だけである。
T(0)=T(0v1+⋯+0vn)=0
よって、定理1により、Tは一対一である。
■