定義域の基底は線形変換の像を生成する
定理1
線形変換 $T : V \to W$が与えられたとする。$V$が有限次元で、$S = \left\{ \mathbf{v}_{1}, \mathbf{v}_{2}, \dots, \mathbf{v}_{n} \right\}$を$V$の基底とする。すると、任意の$\mathbf{v} \in V$の像は次のように表される。
$$ T(\mathbf{v}) = c_{1}T(\mathbf{v}_{1}) + c_{2}T(\mathbf{v}_{2}) + \cdots c_{n}T(\mathbf{v}_{n}) $$
この時、$c_{i}$は$\mathbf{v} = \sum c_{i}\mathbf{v}_{i}$を満たす係数である。つまり、$\left\{ T(\mathbf{v}_{i}) \right\}$は$T$の値域を生成する。
$$ R(T) = \span( T(S) ) = \span \left( \left\{ T(\mathbf{v}_{1}), T(\mathbf{v}_{2}), \dots, T(\mathbf{v}_{n}) \right\} \right) $$
説明
線形変換$T$に対して、基底がどのように変化するかを知れば、全ての$\mathbf{v} \in V$の像を知ることができるという意味である。
証明
基底表示の一意性により、全ての$\mathbf{v} \in V$に対して、次の線形結合が一意に存在する。
$$ \mathbf{v} = c_{1}\mathbf{v}_{1} + c_{2}\mathbf{v}_{2} + \cdots + c_{n}\mathbf{v}_{n} $$
すると、$T$の線形性により、次が成立する。
$$ \begin{align*} T ( \mathbf{v} ) &= T( c_{1}\mathbf{v}_{1} + c_{2}\mathbf{v}_{2} + \cdots c_{n}\mathbf{v}_{n} ) \\ &= T( c_{1}\mathbf{v}_{1} ) + T( c_{2}\mathbf{v}_{2} ) + \cdots + T( c_{n}\mathbf{v}_{n} ) \\ &= c_{1}T(\mathbf{v}_{1} ) + c_{2}T( \mathbf{v}_{2} ) + \cdots + c_{n}T( \mathbf{v}_{n} ) \end{align*} $$
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Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Applications Version(第12版、2019年)、p450 ↩︎