有限次元ベクトル空間における基底となるための必要十分条件
定理1
$V$を$n$次元のベクトル空間とする。部分集合$S\subset V$が$n$個の要素を持つとする。$S$が$V$の基底であるための必要十分条件は、$V = \text{span}(S)$あるいは$S$が線形独立であることだ。
説明
ベクトル空間、次元、基底、生成、独立など、線形代数の重要な基礎概念が全て登場する。任意の集合がベクトル空間の基底になるためには、ベクトル空間を生成する線形独立な集合でなければならない。通常はこれらの条件についてそれぞれ示さなければならないが、次元と同じ数の要素を持つ集合は、一方の条件が成り立てば、もう一方の条件も成り立つ。
証明
片方向は明らかであり、$S$が$V$を生成し、かつ$S$が線形独立であることは、実質的に必要十分条件であるということを証明することと同じである。
$(\implies)$
基底の定義によって明らかである。$S$が$V$の基底であるなら、$S$は$V$を生成し、かつ線形独立である。
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$(\impliedby)$
$S$が$V$を生成するなら、線形独立である
$S$が$V$を生成するとする。そして$S$が線形独立ではないと仮定する。すると、あるベクトル$\mathbf{v} \in S$は$S$内の他のベクトルの線形結合で表される。。2 すると、この$\mathbf{v}$を$S$から除外しても引き続き同じ空間を生成する。 しかし、次元より少ない数の要素を持つ集合はベクトル空間を生成できない。 これは矛盾であるので、$S$が線形独立ではないという仮定が誤っていることがわかる。したがって、$S$は線形独立である。
$S$が線形独立であれば、$V$を生成する。
$S$が線形独立であるとする。そして、$S$が$V$を生成しないと仮定する。これは、生成の定義により、$\text{span}(S)$に含まれないある$\mathbf{v} \in V$が存在するということである。すると、このベクトル$\mathbf{v}$を$S$に加えても引き続き$V$は線形独立である。 しかし、次元より多い数の要素を持つ集合は線形従属である。 これは矛盾であるので、$S$が$V$を生成しないという仮定が誤っていることがわかる。したがって、$S$は$V$を生成する。
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