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エルミート演算子 📂量子力学

エルミート演算子

定義

演算子 $A$ が次の式を満たす時、 エルミート演算子エルミート演算子 と呼ぶ。

$$ A = A^{\dagger} $$

この時、 $A^{\dagger}$ は $A$ の 共役転置 だ。

説明

$A^{\dagger}$ は [エーダガー(A dagger)] と読んで、daggerは短剣を意味する。

フランスの数学者 Hermiteエルミテ の名前にちなんだものだ。英語ではハミルトン演算子と読む。

量子力学で登場するすべての演算子はエルミート演算子だ。

数学で 複素共役 の表記法は $\overline{a+ib}$ で、共役転置の表記法は $A^{\ast}$だ。物理学では $\ast$ の意味を複素共役に限定して説明することが多く、 $A^{\dagger} = (A^{T})^{\ast}$ と表現することもある。しかし ディラック表記法 を考えると、物理学で使用する $\ast$ にも 「共役 + 転置」 の両方の意味が含まれていることがわかる。つまり物理学では複素共役の表記法と共役転置の表記法を重複して $\ast$ と書く。 $\ast$ が付いている対象がスカラーなら複素共役を、行列やベクトルなら共役転置を意味するのだ。 $\ast$ を共役転置ではなく複素共役として考えると行ベクトル、列ベクトルが混乱して行列積をする時に失敗することがあるので次のように覚えよう。

$\ast =$ 共役 $+$ 転置 $=\dagger$

性質

  1. エルミート演算子の期待値(固有値)は常に実数だ。

  2. エルミート演算子の異なる二つの固有関数(固有ベクトル)は直交する。

  3. エルミート演算子 $A$ に対して次の式が成立する。

    $$ \left\langle A\psi|\phi \right\rangle = \left\langle \psi|A\phi \right\rangle $$

  4. 二つのエルミート演算子$A,B$の積 $AB$がエルミート演算子である条件は$[A,B]=0$だ。

  5. 任意の演算子 $A$ に対して次の式は常にエルミート演算子だ。

    $$ A+A^{\dagger} \\ i(A-A^{\dagger}) \\ AA^{\dagger} $$

証明

3

二つの行列 $A, B$ について、 $(AB)^{\dagger} = B^{\dagger}A^{\dagger}$ なので、

$$ \begin{align*} \langle A\psi|\phi \rangle &= \int(A\psi)^{\dagger}\phi dx \\ &= \int \psi^{\dagger} A^{\dagger} \phi dx \\ &= \langle \psi|A^{\dagger}\phi \rangle \\ &= \langle \psi|A\phi \rangle \end{align*} $$