物理学における熱の定義
定義1
相互に作用する二つの系間で移動するエネルギーを熱heatと定義する。
説明
熱の定義を理解するためには、仕事の概念を思い出すといい。ある人が力を使って静止している物体を動かす状況を考えてみよう。その時、物体が動けば力が物体に仕事をしたという。物体の立場から見れば、運動エネルギーを得たわけだが、これを運動エネルギーが力から物体へ流れたと見ることができる。つまり、仕事を移動する運動エネルギーと見ることができる。仕事をしたということは物体の運動エネルギーに変化を与えたということで、熱が流れたということは系のエネルギーが変わったということだ。
だから、物体が含む熱、熱が高い(低い) などの概念は存在しない。
二つの系 $A$, $B$のエネルギーをそれぞれ $E_{A}$, $E_{B}$としよう。$E_{A}$が減少し、$E_{B}$が増加するとしよう。この時、$A$から$B$へ 熱が流れる と表現する。逆に熱が流れないということはエネルギー変化がないという意味で、このような状態を熱平衡thermal equilibriumという。
Stephen J. Blundell and Katherine M. Blundell, 熱物理学の概念 (Concepts in Thermal Physics, イ・ジェウ 訳) (第2版, 2014年), p17-18 ↩︎