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線形変換 📂線形代数

線形変換

定義1

関数 $T : V \to W$がベクトル空間からベクトル空間への写像である場合、つまり $V$、$W$がベクトル空間である場合、$T$を変換transformationと呼ぶ。

変換 $T$が線形関数である場合、すなわち全ての$\mathbf{v},\mathbf{u} \in V$とスカラー$k$について次の二つの条件を満たす場合、線形変換linear transformationと呼ぶ。

  • $T(k \mathbf{u}) = k T(\mathbf{u})$
  • $T(\mathbf{u} + \mathbf{v}) = T(\mathbf{u}) + T(\mathbf{v})$

特に$W=\mathbb{C}$であれば、$T$を線形汎関数と呼ぶ。

説明

関数、写像、変換は事実上同じ言葉として考えてもいい。ただし、線形代数、関数解析学などベクトル空間からベクトル空間への写像を扱う場合は、主に変換と呼び、transformationの頭文字を取って$T$と表記する。

有限次元から有限次元への線形変換の場合は、行列の積と同様に扱うので、以下のように表記する。

$$ T(\mathbf{x}) = T\mathbf{x} $$

$T : V \to V$を満たす線形変換を$V$上の線形作用素linear operator on $V$と呼ぶこともある。しかし、定義域と値域が同じでなければ作用素と呼ばれるわけではない。実用的な理由から、多くの教科書では$T : V \to V$を線形作用素として定義している。

$$ \text{linear transformation form } V \text{ to } V \to \text{linear operator on } V $$

ベクトル空間$X$から$Y$への全ての線形変換の集合は$L(X, Y)$のように表記する。2

$$ L(X,Y) = \mathcal{L}(X, Y) := \left\{ T : X \to Y\enspace |\enspace T \text{ is linear } \right\} $$

行列変換は線形変換の一種である。

恒等変換

線形変換$I : V \to V$が全ての$\mathbf{v} \in V$に対して

$$ I(\mathbf{v}) = \mathbf{v} $$

を満たす場合、恒等変換identity transformationと呼ぶ。具体的には$I_{V}$のように表記することもある。

零変換

線形変換$T_{0} : V \to W$が全ての$\mathbf{v} \in V$に対して

$$ T_{0}(\mathbf{v}) = \mathbf{0}_{W} $$

を満たす場合、零変換zero transformationと呼ぶ。この時$\mathbf{0}_{W}$は$W$の零ベクトルである。$O$、$0$などで表記することもある。簡単に言うと、零関数である。

性質

$T : V \to W$が線形変換であれば、以下が成立する。

(a) $T(\mathbf{0}) = \mathbf{0}$

(b) 全ての$\mathbf{u}, \mathbf{v} \in V$に対して、$T(\mathbf{u} - \mathbf{v}) = T(\mathbf{u}) - T(\mathbf{v})$

証明

(a)

ベクトル空間の性質により、$0\mathbf{v} = \mathbf{0}$であるので、

$$ T(\mathbf{0}) = T( 0\mathbf{u}) = 0T(\mathbf{u}) = \mathbf{0} $$

(b)

同様に、ベクトル空間の性質により$-\mathbf{v} = (-1)\mathbf{v}$であるので、

$$ \begin{align*} T(\mathbf{u} - \mathbf{v}) &= T \big( \mathbf{u} + (-1)\mathbf{v} \big) \\ &= T(\mathbf{u}) + T\big( (-1)\mathbf{v} \big) \\ &= T(\mathbf{u}) + (-1)T(\mathbf{v}) \\ &= T(\mathbf{u}) - T(\mathbf{v}) \end{align*} $$


  1. Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Applications Version (12th Edition, 2019), p446-447 ↩︎

  2. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis (3rd Edition, 1976), p207 ↩︎