行列のランク、零化次元
📂行列代数行列のランク、零化次元
要旨
行列Aの行空間と列空間の次元は同じである。
証明
RをAの行階段形行列とする。基本的な行操作はAの行空間と列空間の次元を変えないため、次の式が成立する。
dim(R(A))dim(C(A))=dim(R(R))=dim(C(R))
従って、Rの行空間と列空間の次元が同じであることを示せば十分である。しかしRの行空間は先頭1がある行、Rの列空間は先頭1がある列で生成されるため、Rの行空間と列空間の次元は同じである。
■
定義
行列Aの行空間(列空間)の次元を ランクrankといい、次のように表示する。
rank(A)=dimR(A)=dimC(A)
行列Aの零空間の次元を 無効次元nullityといい、次のように表示する。
nullity(A)=dimN(A)
説明
ランクは係数、無効次元は劣化次元と訳されることもある。
一方でrank(A)は、Aを行階段形にしたときのピボットの数としても定義することができる。
正方行列でないm×nの行列Aを考えると、行空間は最大でn次元、列空間は最大でm次元になる。しかし、これら2つの値が同じで、それがランクであるため、次の式が成立する。
rank(A)≤min(m,n)
rank(A)=min(m,n)の場合、Aがフルランクfull rankを持っていると言われる。フルランクを持たない場合はランク不足rank deficientと言われる。
直感的に理解が難しい場合は、連立方程式の未知数を数えることから導き出された概念と考えると良い。定義自体は全く難しくないが、m=nの場合、特に零空間や係数、劣化次元などの概念が原書で学んだ人には意味を推測するのが非常に難しいレベルである。これらの概念を学ぶ理由は、後に続く線形代数学の応用を数学の言葉で簡単に表現するためである。複雑な理論が展開されるとき、列空間や零空間などの定義は相当な面積を節約し、より複雑な現象をカバーしてくれる。
ちなみに列空間はIm(A)、つまり像imageとも呼ばれる。行列Aを関数の概念として考える場合、それはA∈Rm×nに対応する関数TAをTA:Rn→Rmとしても見ることができる理由である。
以下のランク-無効次元定理も、関数の概念として考えると理解が容易である。rankA=rankATであることを忘れないでください。
ランク-無効次元定理
行列A∈Mm×n(R)に対して、次の式が成立する。
rank(A)+nullity(A)rank(AT)+nullity(AT)=dimRn=n=dimRm=m
行列の次元定理とも呼ばれる。線形変換について一般化すると、次のようになる。
ベクター空間V,Wと線形変換T:V→Wに対して、次の式が成立する。
rank(T)+nullity(T)=dim(V)
証明
Aをm×n行列とする。すると、Aの列がn個であるため、斉次線形システムAx=0はn個の未知数を持つ。従って、「先導変数の数 + 自由変数の数 = n」が成立する。先導変数の数は先導1の数と同じであり、これは行空間の次元と同じである。また、自由変数の数はパラメータの数と同じであり、これは零空間の次元と同じである。したがって、定理が成立する。
■
関連する話題
零空間はkerAと表され、核Kernelとも呼ばれる。これは抽象代数学で扱われる一般的な核の概念を線形代数で特殊化した表現であり、これもまたAを関数として見ることに由来する。