直交行列の性質
性質1
直交行列は、以下の性質を持つ。
(a) 直交行列の転置も直交行列である。
(b) 直交行列の逆行列は直交行列である。
(c) 2つの直交行列の積は直交行列である。
(d) 直交行列の行列式は、$1$または$-1$である。
$$ \det(A)=\pm 1 $$
証明
(a)
$A$を直交行列とする。$B$を$A$の転置とする。
$$ B=A^{T} $$
すると、以下の式が成り立つ。
$$ B^{-1} = (A^{T})^{-1} = (A^{-1})^{-1} = A = B^{T} $$
■
(b)
$A$を直交行列とする。$B$を$A$の逆行列とする。
$$ B = A^{-1} $$
すると、$A$が直交行列であり、$(A^{-1})^{T} = (A^{T})^{-1}$が成り立つので、以下の式が成り立つ。
$$ B^{-1} = (A^{-1})^{-1} = (A^{T})^{-1} = (A^{-1})^{T} = B^{T} $$
■
(c)
$A$、$B$を$n \times n$のサイズの直交行列とする。すると、$(AB) (AB)^{T}$であることを示せば証明が完了する。$(AB)^{T}=B^{T}A^{T}$が成り立つので、以下の式が成り立つ。
$$ \begin{align*} (AB)(AB)^{T} &= (AB) (B^{T}A^{T}) \\ &= (AB)(B^{-1}A^{-1}) \\ &= AA^{-1} \\ &= I \end{align*} $$
■
(d)
$A$を直交行列とする。すると、積の行列式と行列式の積が等しいので、以下の式が得られる。
$$ \begin{align*} \det(I) &= \det(AA^{T}) \\ &= \det(A) \det(A^{T}) \end{align*} $$
また、転置の行列式と行列式の転置が等しいので、以下の式が得られる。
$$ 1 = \det(I) = \left( \det(A) \right)^2 $$
従って、
$$ \det(A) = \pm 1 $$
Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Applications Version(第12版、2019年)、p401 ↩︎