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エルミート行列 📂行列代数

エルミート行列

定義

$A$を正方の複素数行列とする。$A$が下の式を満たせば、エルミート行列Hermitianまたは自己共役行列self-adjoint matrixという。

$$ A^{\ast}=A $$

ここで、$A^{\ast}$は$A$の共役転置である。$A$が下の式を満たせば、反エルミート行列skew-Hermitian, anti-Hermitianという。

$$ A^{\ast}=-A $$

説明

実数行列なら、$A^{\ast}=A^{T}$なので対称行列ならエルミート行列だ。次の性質から分かるように、エルミート行列の対角成分は必ず実数だ。だから、行列のサイズが小さいなら、目で見てエルミート行列かどうか簡単に判断できる。

エルミート行列の対角成分が必ず実数であるのと同じ理由で、反エルミート行列の対角成分は全部$0$だ。

性質

$A$をエルミート行列とする。

(a) $A$の対角成分は必ず実数だ。

(b) $A$の固有値は全部実数だ。

(c) $A$の異なる固有値を持つ固有ベクトルは互いに直交する。


(b) 量子力学の観点から言えば、「エルミート演算子の期待値は常に実数だ」となる。

証明

(a)

行列$A$の転置$A^{T}$は、$A$の成分を主対角線を基準にして対称移動させたものだ。だから、二つの行列の対角成分は常に同じだ。これはすなわち$a_{ij}=\overline{a_{ij}}$を意味し、対角成分は実数だ。

(b)

(c)