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対称行列、歪対称行列 📂行列代数

対称行列、歪対称行列

定義1

任意の正方行列AAが次の式を満たすとき、AA対称行列symmetric matrixと呼ぶ。

A=AT A=A^{T}

このとき、ATA^{T}AA転置行列である。AAが次の式を満たすとき、AA反対称行列anti-symmetric matrixと呼ぶ。

A=AT A =-A^{T}

説明

転置行列の定義により、正方行列ではない行列は対称行列、反対称行列にはなれない。AAが反対称行列なら、定義によりaii=aiia_{ii}=-a_{ii}となるので、対角成分は必ず00である。

性質

AABBが同じ大きさの対称行列で、kkを任意の定数とする。

(a) ATA^{T}は対称行列である。

(b) A±BA \pm Bは対称行列である。

(c) kAkAは対称行列である。

(d) AAが可逆であれば、A1A^{-1}も対称行列である。

(e) AAm×nm \times n行列とする。すると、AATAA^{T}m×mm \times m対称行列であり、ATAA^{T}An×nn \times n対称行列である。

(f) AAが可逆であれば、ATAA^{T}AAATAA^{T}も可逆である。

証明

(d)

AAが可逆行列だとする。すると(AT)1=(A1)T(A^{T})^{-1} = (A^{-1})^{T}が適用されるので、A1A^{-1}も対称行列である。

(e)

AAm×nm \times n行列とする。するとAATAA^{T}のサイズは(m×n)×(n×m)=m×m(m \times \cancel{n} ) \times (\cancel{n} \times m) = m \times mであり、転置行列の性質により以下が成立する。

(AAT)T=AAT (AA^{T})^{T}=AA^{T}

したがって、AATAA^{T}は対称行列である。ATAA^{T}Aについても証明は同じである。

(f)

可逆行列の性質により、AAが可逆であれば、ATA^{T}も可逆であり、可逆行列の積は可逆なので、AATAA^{T}ATAA^{T}Aも可逆である。

定理

二つの行列の積が対称行列であるための必要十分条件は、二つの行列の積が交換可能であることである。


二つの行列の積二つの行列の積は一般に交換可能ではないことを心に留めておく。


  1. Howard Anton, Elementary Linear Algebra: Applications Version (12th Edition, 2019), p72-74 ↩︎