抽象代数学における群
定義 1
モノイド $\left< G, \ast\ \right>$ の元 $a$ と単位元 $e$ に対し、$a \ast\ a’ = a’ \ast\ a = e$ を満たす $a '$ が存在すれば、$\left< G, \ast\ \right>$を群groupと定義する。すなわち、群は以下の性質を満たす二項演算構造だ。
- (i): 演算に対して結合法則が成立する。
- (ii): すべての元に対して単位元が存在する。
- (iii): すべての元に対して逆元が存在する。
説明
マグマから始まり半群、モノイドを経て、ついに群に到達した。大したことないように見えるかもしれないが、マグマと比較すると、条件はかなり増えている。演算で閉じており、結合法則が成立し、単位元と逆元の存在が必要なので、何でもかんでも群とは言えなくなっている。
群を研究する理由は、他の代数的構造よりもずっとシンプルで簡単だからだ。群より条件が少なければ有用な性質も少なくなり、群より条件が多ければ使い道が減る。
代数学で興味を持つ代数的構造のほとんどは基本的に群に基づいており、代数学は純粋数学の数論から、暗号理論のような日常生活に溶け込んだ応用数学にまで応用されている。数学以外では、驚くべきことに物理学でも群論が使われている。
モノイドになりながら、群にならない例を見てみよう。
正方行列の集合 $\mathbb{R}^{n \times n}$ に対して、モノイド $\left< \mathbb{R}^{n \times n} , \cdot \right>$ は群ではない。
- 行列 $A \in \mathbb{R}^{n \times n}$ に対して、$\det A = 0$ ならば、$A^{-1}$ が存在しない。
もちろん、集合に制限を加えれば、これも群になりえる。
逆行列が存在する正方行列の集合 $\text{GL}_{n} (\mathbb{R}) = \left\{ A \in \mathbb{R}^{n \times n} \ | \ \det A \ne 0 \right\}$ に対して、モノイド $\left< \text{GL}_{n} (\mathbb{R}) , \cdot \right>$ は群である。
- $\left< \mathbb{R}^{n \times n} , \cdot \right>$ の部分モノイド $\left< \text{GL}_{n} (\mathbb{R}) , \cdot \right>$ は、乗算の逆元を持つので、定義 $\text{GL}_{n} (\mathbb{R})$ により群である。
対称性?
群の概念を掴むとき、よく対称性についての話から始まったり、完全に数学的な定義だけで築き上げられたりする。
対称性の例としては、ルービックキューブを回したりそのままにしたり(単位元)、元に戻したり(逆元)することがよく言及される。しかし、このような説明は構造が対称性を持つものが群の構造を持つことを理解しやすいが、群の構造が対称性を持つことを把握するのは難しい。群の形で数学的な定義に従うと、対称とは逆元の概念を思い浮かべるのが良い。
$a$ が存在するなら、群の定義により、それに対応する $a '$ が必ず存在する。
一方で、$a '$ もそれに対応する $a’’=a$ が存在するので、このような関係から対称を考えるのは自然だと言える。モノイドと群の違いは逆元だけなので、概念と定義がより妥当に一致していることが確認される。
対称の話が出たからには、対称にピッタリの群の例を見てみよう。
モノイド $\left< \mathbb{Z} , + \right>$ は群である。
- 整数 $a$ に対して、$-a$ は常に $a + (-a) = 0$ を満たす逆元になる。
$1$ が存在すれば、単位元 $0$ を中心に対称の $-1$ が存在し、$-2$ に対しては $2$ が存在し…$n$ に対しては $-n$ が存在する。対称という意味で考えれば、かなり自然な例だ。
一般的に、群だけを扱う場合、群 $\left< G, \ast\ \right>$ はただ $G$ と表し、操作は特に言及がなければ $\cdot$ と書く。ただし$\left< \mathbb{Z} , + \right>$ のように加算が明確なコンテキストでは、$+$ のように場合に応じて適切な操作を使う。
Fraleigh. (2003). “A first course in abstract algebra(7th Edition)”: p37. ↩︎