部分空間の直交補空間
📂線形代数部分空間の直交補空間
定義
ベクトル空間 V の部分空間 W に対する集合
W⊥={v∈V :⟨v,w⟩=0,∀w∈W}
を W の直交補空間orthogonal complementという。この時 ⟨,⟩ は内積である。
説明
つまり、W⊥は W のすべての元と直交するベクトルを集めた集合である。記号 ⊥ は perpendicular を縮めて perp[ぺるぷ] と読む。文字通りの定義だから特にユークリッド空間では容易に受け入れることができる定義だろう。簡単な例で、R3 から W=span{(1,0,0),(0,1,0)} とするならば W⊥=span{(0,0,1)} になる。
性質
W と R を Rn の部分空間、 A∈Mm×n(R) としよう。すると、次の性質を満たす。
[1] (W⊥)⊥=W
[2] W⊕W⊥=Rn
[3] R⊂W⟺W⊥⊂R⊥
[4] N(A)⊥=R(A)
[5] C(A)⊥=N(AT)
[6] Rm=C(A)⊕N(AT)
[7] Rn=R(A)⊕N(A)
これらの性質は、直交補空間の定義を考えると当たり前だと言えるだろう。ただし、[2] はチェックすることが多く少し厄介だ。これらの性質と一緒に重要なのは、零空間と列空間を一緒に考えた時の性質である。
これらの性質は一見複雑に見えるが、幸いにも ⊥ が T の逆さまに見えれば、覚えることは難しくない。内外に移動しながら N と C を反転させるように考えれば、全く混乱することはないだろう。
一方、ランク・ヌルティ数定理も**[6], [7]** の結果に dim を適用したものと考えることもできるだろう。
定理
W が内積空間 V の部分空間であるならば、次が成立する。
(a) W⊥ は V の部分空間である。
(b) W∩W⊥={0}
証明
(a)
すべての w∈W に対して ⟨w,0⟩=0 であるため、少なくとも 0 は W⊥ に含まれる。それは空集合ではないので、加法とスカラー乗法で閉じているかだけを確認すればよい。u,v∈W⊥ k∈R とする。すると、次の式が成り立つ。
⟨u+v,w⟩=⟨ku,w⟩=⟨u,w⟩+⟨v,w⟩=0+0=0k⟨u,v⟩=k⋅0=0
従って、W⊥ は部分空間である。
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(b)
v∈W∩W⊥ とする。すると、v が v と直交するという意味であるので、
⟨v,v⟩=0
これを満たす v は内積の定義により 0 のみである。
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