代数トポロジーにおける誘導された準同型写像
定義 1 2
$X,Y$を位相空間とし、$\varphi : X \to Y$が連続であるとする。以下のように定義される準同型写像 $$ \varphi_{\ast} [f] := \left[ \varphi f \right] = \left[ \varphi \circ f \right] \qquad , \forall f : I \to X $$ と $$ \varphi_{\ast} : \pi_{1} \left( X, x \right) \to \pi_{1} \left( Y, \varphi (x) \right) $$ を誘導された準同型写像と呼ぶ。
定理
- [1]: もし$\phi : X \to Y$と$\psi : Y \to Z$が連続であれば、$\left( \psi \phi \right)_{\ast} = \psi_{\ast} \phi_{\ast}$が成り立つ。
- [2]: もし$\varphi : X \to Y$が位相同型であれば、$\varphi_{\ast} : \pi_{1} \left( X, x \right) \to \pi_{1} \left( Y, \varphi (x) \right)$は同型である。
説明
位相数学は二つの位相空間間の位相同型に、代数学は二つの代数構造間の同型に関心があるのは自然なことである。代数的位相幾何学がこの二つに興味を持つのは全く自然なことであり、誘導された準同型写像は関連する理論の研究において非常に重要な概念である。
記号について言えば、定義に書かれているように関数の合成がどうで連続性がどうであるとか考えるより、まずは形から受け入れる方が勉強しやすい。 $$ \begin{align*} \phi :& X \to Y \\ \phi_{\ast} :& \pi_{1} X \to \pi_{1} Y \end{align*} $$ 形式を見ると、$\ast$があるかないかで関数が区別されている。上の二つの式では、$f : I \to X$が$X$内のパスであるとか、$\varphi : X \to Y$が$X$の始点$x \in X$を$\varphi(x) \in Y$に対応させるとか、$[f] \in \pi_{1} (X, x)$がホモトピークラスであるとかの説明をすべて省いて、覚えやすく要約されている。つまり、
- $\ast$がない$\phi$は位相数学(連続関数)であり
- $\ast$がある$\phi_{\ast}$は代数学(準同型写像)である。
これを覚える良い方法はホモトピークラス間の演算が $$ [f] \ast [g] = \left[ f \cdot g \right] $$ と表記されていることを思い出すことだ。代数的位相幾何学では、少なくともホモトピーを扱う文脈では、$\ast$がつけば代数の話をしていると見做せば勉強がずっと楽になる。そしてここで、$f \cdot g$は$f$と$g$の終点を繋いだパスプロダクションであり、定義の $$ \varphi_{\ast} [f] := \left[ \varphi f \right] $$ では、$\varphi f$は関数の合成であり、$\varphi \circ f$を表している。これは少し考えれば明らかになる。$f$の値域が$X$であり、$\varphi$の定義域が$X$なので、合成が自然であり、単なるパスではないため、その間の演算はパスプロダクト$\cdot$ではあり得ない。