SEIRモデル:潜伏期と潜在期
概要
SEIR モデルは、SIR モデルに接触群を追加した疫学の区分モデルです。
モデル 1 2
$$ \begin{align*} {{d S} \over {d t}} =& - {{ \beta } \over { N }} I S \\ {{d E} \over {d t}} =& {{ \beta } \over { N }} S I - {{ 1 } \over { \tau }} E \\ {{d I} \over {d t}} =& {{ 1 } \over { \tau }} E - \mu I \\ {{d R} \over {d t}} =& \mu I \end{align*} $$
変数
- $S(t)$: $t$ の時点で病気になりうるsusceptible 集団の個体数を表す。
- $E(t)$: $t$ の時点で接触群exposedの個体数を表す。
- $I(t)$: $t$ の時点で病気を伝えることができるinfectious 集団の個体数を表す。
- $R(t)$: $t$ の時点で回復したrecovered 集団の個体数を表す。
- $N(t) = S(t) + E(t) + I(t) + R(t)$: 総個体数を表す。
パラメータ
- $\beta>0$: 伝染率infection rateである。
- $1/\tau>0$: 平均潜伏時間latencyである。
- $\mu>0$: 回復率recovery rateである。
解説
通常、接触直後に症状が現れ、すぐに伝播される病気はないため、SIR モデルよりも現実的なモデルと考えられる。病気の広がりの文脈で接触群 $E$ とは、感染者と接触して病原体を移され、まもなく病気にかかるが、まだ体内で十分に増殖していないため、感染力がない状態としても問題ないと見なされる。
潜伏期間と潜在期間
$\tau$ は、通常 潜伏期間incubation Periodと潜在期間latent Periodとして混同されているが、感染症学的には接触後に臨床的な症状が起こるまでの期間を潜伏期間、感染力が出るまでの期間を潜在期間と区別する風潮がある。3
数理モデリングでは、完全に$I$ に入る前に感染力がない期間を潜在期間と言い、$E$ でも感染力があれば潜伏期間と呼べる。時間が経過するにつれて感染力が強くなるなど、ウイルス量viral Loadを考慮すると、このような区分が意味を持つ。
発生個数と有病率
モデル内で接触時期と症状の発現のタイミングに差があるため、発生incidenceと有病prevalenceも区別されるべきである。特定の期間$\Delta t$ の間に$E$ から$I$ に移った数を発生症例数と言い、特定の時点$t$ で疾患を持つ個体の割合$I(t)/N(t)$ を有病率という。
実際には、発生は疾病にかかったかどうかの診断によって知られるため、確認済みconfirmedとも表現される。
確率モデルstochastic model
通常の微分方程式ではなくシミュレーション モデルなどでは、$\tau$ を確率変数として扱うことができる。その分布は研究している疾病によって異なるが、通常はワイブル分布またはガンマ分布などを考慮する。
Allen. (2006). An Introduction to Mathematical Biology: p275. ↩︎
Capasso. (1993). Mathematical Structures of Epidemic Systems: p59. ↩︎
복지부 장관도 헷갈리는 바이러스 ‘잠복기’ 용어 http://www.docdocdoc.co.kr/news/articleView.html?idxno=1076727 ↩︎