SDEの数値解の強収束と弱収束
ビルドアップ
$$ d X_{t} = f \left( t, X_{t} \right) dt + g \left( t , X_{t} \right) d W_{t} \qquad , t \in \left[ t_{0} , T \right] $$ 確率微分方程式が上記のように与えられ、時間が$t_{0} < t_{1} < \cdots < t_{N}$のように離散化されているとしよう。十分に大きな$N \in \mathbb{N}$を選んで$\Delta = \left( T - t_{0} \right) / N \in (0,1)$とするとこれは等間隔に切ったことになる。SDEの解を$X(t)$とし、その数値近似解を$Y(T)$とした場合、両者の平均的な差である $$ E \left| X(T) - Y(T) \right| $$ は、数値近似解の正確さに関する合理的な尺度となるだろう。
定義 1
$\Delta$に依存せず、次を満たす定数$C$と$\gamma$が存在する場合、$Y_{\Delta}$はソリューション$X$に**$\gamma$のオーダーで強く収束すると言われる。 $$ E \left| X(T) - Y_{\Delta} (T) \right| \le C \Delta^{\gamma} $$ $\Delta$に依存せず、次を満たす多項式関数$h$と定数$C_{h}$、$\beta$が存在する場合、$Y_{\Delta}$はソリューション$X$に$\gamma$のオーダーで弱く収束する**といえる。 $$ \left| E \left( h \left( X (T) \right) \right) - E \left( h \left( Y_{\Delta} (T) \right) \right) \right| \le C_{h} \Delta^{\beta} $$
説明
$X(T)$と$Y_{\Delta}(T)$は終点$T$での確率変数だ。式の意味することは、最後の点での乖離が$\Delta \to 0$の時、平均的に$0$に近づくという意味なので、双方とも’収束’という概念をよく表していると言える。
弱い収束は、解そのものではなく多項式関数$h$で方程式を修正できる余地があるという点で「弱い」という表現が適切である。それに対して強く収束するというのは、それとは対照的な概念だと考えられる。一般的に、$f$と$g$に何らかのスムージング条件が与えられている場合、弱い収束のオーダーは強い収束のオーダーよりも高い。
Panik. (2017). Stochastic Differential Equations: An Introduction with Applications in Population Dynamics Modeling: p196. ↩︎