SIRモデル:最も基本的な拡散モデル
📂動力学SIRモデル:最も基本的な拡散モデル
概要
SIRモデルは、疾病や情報の拡散をシンプルかつ直感的によく説明する、最も単純で多くの変形を持つ力学的区画モデルのひとつだ。
モデル

dtdS=dtdI=dtdR=−NβISNβSI−μIμI
変数
- S(t): tの時点で病気にかかりうるsusceptible集団の個体数を示す。
- I(t): tの時点で病気を伝えうるinfectious集団の個体数を示す。情報の拡散の文脈では、Informedの頭文字をとることもある。
- R(t): tの時点で回復したrecovered集団の個体数を示す。情報の拡散の文脈では、RefractoryやRemovedの頭文字をとり、シミュレーション上で反応しなくなり扱わない意味をもつこともある。
- N(t)=S(t)+I(t)+R(t): 総個体数を示す。バイタルダイナミクスvital dynamicsが考慮されていない場合、通常は保存量(定数)として扱われ、変数を全人口の比率として扱う場合には、しばしばN(t)=1と表される。
パラメータ
- β>0: 伝染率infection rateである。
- μ>0: 回復率recovery rateである。
説明
変数で言及されたバイタルダイナミクスは、文字通り各個体の生涯を考慮し、生まれて年を取り、死んでいくことで総個体数自体が変化することを意味する。長い時間にわたる分析や、風土病に関してではない限り、特に重視されることはない。
導出
ロトカ-ヴォルテラ 捕食者-被食者モデル:
x˙=y˙=ax−by⋅xcx⋅y−dy
ロトカ-ヴォルテラ競争モデルの特別な場合と見なせば、導出はほとんど終わったと同じだ。Sは病気に関する被食者S=x、Iは自然に捕食者I=yとなる。被食者集団が病気に対する対抗手段がないと仮定するとa=0で、b=c:=β/N、d=μとすれば
dtdS=dtdI=−NβISNβSI−μI
ここに、単にRの変化率をdtdR=μIのように加えるだけで、SIRモデルのシステムを得る。
■
R0=μβ
正確には、ヤコビ行列で固有値を正確に求めることができるが、計算が多いので省略し、手軽な方法を考えよう。最初の伝染病が広がり始める時期、つまりS≈Nの時、この伝染病が最終的に大発生へとつながるためにはdtdI>0でなければならない。言い換えればI(0)>0に対して
NβNI−μI≈(β−μ)I>0
数式でμβ>1であれば、Iは続けて増加し、大発生が起こる。この観点から、R0:=μβは流行の臨界値epidemic Thresholdとも呼べる。
変形
SIRSモデル:一時的免疫
基本的にRrecovered状態は、病気から回復した状態、つまり病気に対する永久的な免疫を得たものと仮定している。しかし、以下のように項νRを入れることで免疫喪失を反映させることができる。SIRとは異なり、直感的に風土病endemicを扱うことができる。
dtdS=dtdI=dtdR=−NβIS+νRNβSI−μIμI−νR
保菌者
保菌者carrierは病気を広げるが、臨床的な症状はない個体を指す。これらの数Cが一定であれば、SIRシステムは次のように修正できる。
dtdS=dtdI=dtdR=−Nβ(I+C)SNβS(I+C)−μIμI
バイタルダイナミクス
ロジスティック成長モデルと同様に、出生率r>0と死亡率γ>0を与えてバイタルダイナミクスを考慮できる。ここでは死亡率は感染の有無にかかわらず同様に適用され、成長率も感染状態を問わず現在の総個体数N(t)=S(t)+I(t)+R(t)に比例する。
dtdS=dtdI=dtdR=−γS−NβIS+rN−γI+NβSI−μI−γR+μI
垂直感染
垂直感染または母子感染は母体から新生児に直接伝わる感染を指し、B型肝炎ウイルスがその例の一つだ。これを反映するために、上記のバイタルダイナミクスから得られたシステムを、垂直感染確率q∈(0,1)を与え、次のように修正することができる。
dtdS=dtdI=dtdR=−γS−NβIS+r(1−q)N−γI+NβSI−μI+rqN−γR+μI
rqNは病気を持って生まれてくる新生児に対する項である。