テスト関数の空間がシュワルツ空間の真部分集合であることの証明
定理1
$\mathcal{D}$をテスト関数空間、$\mathcal{S}$をシュワルツ空間とする。それでは以下の式が成り立つ。
$$ \mathcal{D} \subsetneq \mathcal{S} $$
証明
戦略: まず、全てのテスト関数がシュワルツ空間に属していることを示し、次にテスト関数ではないシュワルツ関数の例を示すことによって証明する。
$\phi$を以下の二つの条件を満たすとき、シュワルツ関数と定義する。
- (a) $\phi \in C^{\infty}$
- (b) 全てのマルチインデックス $\alpha$、$\beta$に対して、$\left| x^{\beta}D^{\alpha}\phi (x) \right| <\infty$
任意のテスト関数 $\phi$が与えられたとしよう。$\phi \in C_{c}^{\infty}$であるため、条件 (a) を満たす。$\phi$のサポートは有界であるため、以下の式を満たす$r>0$が存在する。
$$ \mathrm{supp}\phi \subset \overline{B}(r) $$
ここで、$\overline{B}(r)$は原点を中心とし、半径が$r$の閉球である。さらに、テスト関数の性質により、任意のマルチインデックス $\alpha$に対して以下の式が成立する。
$$ \mathrm{supp}D^{\alpha}\phi\subset \mathrm{supp}\phi \subset \overline{B}(r) $$
以下の二つの場合に分けて考える。
ケース 1. $x \notin \overline{B}(r)$
すると$D^{\alpha}\phi (x)=0$であり、
$$ \left| x^{\beta}D^{\alpha}\phi (x) \right|=0 <\infty $$
ケース 2. $x \in \overline{B}(r)$
$D^{\alpha}\phi (x)$は連続関数であり、連続関数はコンパクト空間で最大値、最小値を取るので、ある正の数$K>0$に対して以下の式が成り立つ。
$$ \left| x^{\beta}D^{\alpha}\phi (x) \right|\le r^{\beta}K <\infty $$
したがって$\phi \in \mathcal{S}$であるから、$\mathcal{D}\subseteq \mathcal{S}$が成立する。今、以下のような関数を考えよう。
$$ \phi (x)=e^{-x^{2}} $$
すると$\phi \in C^{\infty}$は自明である。しかし、$\phi (x)\ne0, \forall x\in \mathbb{R}$であるため、$\phi$はコンパクトサポートを持てない。したがって$\phi$はテスト関数ではない。今、$\phi \in \mathcal{S}$を示せば証明は完了する。連鎖律により、$D^{\alpha}\phi$は$\phi$と任意の多項式$P$の積で表すことができる。
$$ D^{\alpha}\phi (x) = P(x)\phi (x) $$
したがって、以下の式が成立する。
$$ \begin{equation} \left| x^{\beta}D^{\alpha}\phi (x) \right| =\frac{\left| x^{\beta}P(x) \right| }{e^{x^{2}}} \label{eq1} \end{equation} $$
分子が多項式で、分母が指数関数であるため、以下の式が成立する。
$$ \lim \limits_{x\to \pm\infty} \frac{\left| x^{\beta}P(x) \right| }{e^{x^{2}}}=0 $$
よって、全ての$\varepsilon >0$に対して、以下の式が成立する$N>0$が存在する。
$$ \left| x \right| > N \implies \frac{\left| x^{\beta}P(x) \right| }{e^{x^{2}}} < \varepsilon $$
今、$\left| x \right| \le N$の場合を考えよう。$[-N,N]$はコンパクトであり、$\eqref{eq1}$は連続関数なので、ある正の数$M>0$によってバウンドされる。今、$C_{\alpha,\beta}=\max \left\{ M,\varepsilon \right\}$とすると、以下が成立する。
$$ \left| x^{\beta}D^{\alpha}\phi (x) \right| \le C_{\alpha,\beta} $$
したがって、$\phi \in \mathcal{S}$である。したがって$\phi \notin \mathcal{D}$であり、$\phi \in \mathcal{S}$であるため、以下が成立する。
$$ \mathcal{D} \subsetneq \mathcal{S} $$
■
Daniel Eceizabarrena perez, Distribution Theory and Fundamental Solutions of Differential Operators (2015), p16-17 ↩︎