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ベクトル値関数の積分 📂多変数ベクトル解析

ベクトル値関数の積分

定義1

$f_{1}$, $f_{2}$, $\dots$, $f_{k}$が区間$[a,b]$で実数値をとる関数だとしよう。そして$\mathbf{f} : [a,b] \to \mathbb{R}^{k}$が次のように定義されているとする。

$$ \mathbf{f}(x)=\left( f_{1}(x),\dots,f_{k}(x) \right),\quad x\in [a,b] $$

この時、各$f_{k}$が区間$[a,b]$で可積分であれば、$\mathbf{f}$の積分を次のように定義する。

$$ \int _{a} ^{b} \mathbf{f}dx = \left( \int _{a} ^{b}f_{1} dx, \dots, \int _{a} ^{b}f_{k} dx \right) $$

定理

$f : [a,b]\to \mathbb{R}$を満たす関数に関して以前に整理した内容がそのまま成立する。

微分積分学の基本定理2

ベクトル値関数$\mathbf{f}, \mathbf{F} : [a,b] \to \mathbb{R}^{k}$について、$\mathbf{f}$が可積分であり、$\mathbf{F}^{\prime}=\mathbf{f}$が成立するとしよう。すると次の式が成立する。

$$ \int _{a} ^{b} \mathbf{f}(t)dt = \mathbf{F}(b)-\mathbf{F}(a) $$

積分の絶対値は絶対値の積分より小さい

$$ \begin{equation} \left| \int _{a} ^{b} \mathbf{f}dx \right| \le \int _{a} ^{b} \left| \mathbf{f} \right| dx \label{eq1} \end{equation} $$

証明

$\mathbf{f}=\left( f_{1},\dots,f_{k} \right)$とすると、次が成立する。

$$ \left| \mathbf{f} \right| =\left( f_{1}^{2}+\cdots +f_{k}^{2} \right)^{1/2} $$

積分は線形であり、関数の積は可積分性を保存するので、各$f_{i}^{2}$とそれらの和も可積分である。また、$x^{2}$がコンパクト集合$[a,b]$で連続なので、$x^{1/2}$も連続であり、連続ならば可積分である連続関数の合成は可積分性を保存するので、次が成立する。$\left| \mathbf{f} \right|$は可積分である。

$\eqref{eq1}$を示すために、次のようにしよう。

$$ \mathbf{y} = \left( y_{1},\dots,y_{k} \right) \quad \text{and} \quad y_{i}=\int f_{i}dx $$

すると、次が成立する。

$$ \mathbf{y} = \left( y_{1},\dots,y_{k} \right) = \left( \int f_{i}dx, \dots, \int f_{k}dx \right) = \int \mathbf{f}dx $$

さらに、次を得る。

$$ \left| \mathbf{y} \right| ^{2} = \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}^{2} = \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}\int f_{i}dx = \int \left( \sum \limits _{i=1} ^{k}y_{i}f_{i} \right) dx $$

すると、コーシー・シュワルツの不等式により、次が成立する。

$$ \sum \limits _{i=1} ^{n} y_{i}f_{i}(t) \le \left| \mathbf{y} \right| \left| \mathbf{f}(t) \right|, \quad a\le t \le b $$

すると、$\left| \mathbf{y} \right| \ne 0$の時、次が成立する。

$$ \begin{align*} && \left| \mathbf{y} \right| ^{2}\le \int \left| \mathbf{y} \right| \left| \mathbf{f} \right| dx \\ \implies && \left| \mathbf{y} \right| \le \int \left| \mathbf{f} \right|dx \\ \implies && \left| \int \mathbf{f}dx \right| \le \int \left| \mathbf{f} \right|dx \end{align*} $$

もちろん、$\left| \mathbf{y} \right| =0$の場合は自明に成立する。


  1. ウォルター・ルーディン, 数学分析の原理 (3版, 1976), p135-136 ↩︎