解析学における様々な級数判定法の総整理
📂微分積分学解析学における様々な級数判定法の総整理
概観
証明無しにいくつかの級数判定法を紹介したい。事実としてうまく活用することが大切で、大体証明の過程も退屈だからである。
このポストでは、以下の記法を共有する:
- N は自然数を全て集めた集合である。
- R は全ての実数を集めた集合で、R は実数集合に±∞ を含む拡張された実数集合である。
- {ak}k∈N,{bk}k∈N⊂R は実数列である。
- ∃limk→∞xk はxk の極限がR に存在する、つまり収束するという意味である。反対に∃limk→∞xk はxk の極限がR に存在しない、つまり発散するという意味だ。
- 十分に大きいk に対してk→∞limbkak=1 の時ak≈bk と表される。
- bk↓0 はbk が減少数列であり、k→∞ の時0に収束しつつ0以上の値を取ることを意味する。
実数列
発散判定法
limk→∞ak=0 ならば∑k=1∞ak は発散する:
k→∞limak=0⟹∃k=1∑∞ak
コーシー判定法
∑n=1∞an が収束することはlimn→∞∑k=nn+mak=0 と等価である:
∃k=1∑∞ak⟺(∀ε>0,∃N∈N:m≥n≥N⟹k=n∑mak<ε)
非負数列
各項が0より大きいか等しい、ak≥0 を持つ数列について扱う。
積分判定法
減少関数 f:[1,∞)→R が常に0より大きいとする。∑k=1∞f(k) が収束することは∫1∞f(x)dx<∞ と等価である:
∃k=1∑∞f(k)⟺∫1∞f(x)dx<∞
- 積分判定法integral testはf(n+1)≤∫nn+1f(x)dx≤f(n) を利用して証明される。証明過程が面白い稀有な判定法である。
p級数判定法
∑k=1∞k−p が収束することはp>1 と等価である:
∃k=1∑∞kp1⟺p>1
- p級数判定法p-Series testは簡単に言えば、調和級数で少しでも指数を上げると収束し、そうでなければ発散するというものである。幾何級数を積分判定法に入れて導かれる推論だが、非常にシンプルで有用なので、積分判定法よりもよく使われる。
比較判定法
十分に大きいk に対して0≤ak≤bk としよう。∑k=1∞bk が収束するならば、∑k=1∞ak も収束する:
k=1∑∞bk<∞⟹k=1∑∞ak=∞⟹k=1∑∞ak<∞k=1∑∞bk=∞
- 比較判定法comparison testは名前の通り、既に収束することがわかっている別の級数と比較して収束することを示す時に使う。対偶を使えば、同様に級数が発散するかを確認することができる。
極限比較判定法
十分に大きいk に対してak≥0 とし、bk>0 とする。L:=limk→∞bkak∈R は何らかの拡張された実数である。 (1) 0<L<∞ ならば、∑n=1∞an と∑n=1∞bn は共に収束するか、あるいは共に発散する。 (2) L=0 で∑n=1∞bn が収束するなら、∑n=1∞an も収束する。 (3) L=∞ で∑n=1∞bn が発散するなら、∑n=1∞an も発散する:
0<L<∞⟹L=0⟹L=∞⟹(∃k=1∑nak⟺∃k=1∑nbk)(∃k=1∑nbk⟹∃k=1∑nak)(∃k=1∑nbk⟹∃k=1∑nak)
- 極限比較判定法limit Comparison testは比較判定法と同様に、元の級数が収束することを示すのが難しいので、別の収束する級数と比較するものである。条件は厳しそうに見えるが、実際には収束性だけを示す場合には満たしやすいので非常に有用である。
絶対収束
無限級数S=∑k=1∞ak に対して、∑k=1∞∣ak∣ が収束するならば、S を絶対収束converge Absolutelyと定義する。これに従って絶対収束しないがS 自体は収束する級数を条件付き収束converge Conditionallyとも言う。
根判定法
{∣ak∣1/k} のリミットスープリーム r=limsupk→∞∣ak∣1/k に対して、r<1 ならば∑n=1∞ak は絶対収束、r>1 ならば∑n=1∞ak は発散する:
r<1⟹r>1⟹∃k=1∑∞∣ak∣∃k=1∑∞ak
比判定法
ak=0 とし、r=limk→∞∣ak∣∣ak+1∣∈R を拡張された実数とする。r<1 ならば∑k=1∞akは絶対収束、r>1 ならば∑k=1∞akは発散する:
r<1⟹r>1⟹∃k=1∑∞∣ak∣∃k=1∑∞ak
- 根判定法root testと比判定法ratio testは条件がやや厳しいが絶対収束を一発で示すためによく使われる。一方でr=1 の場合は、ディリクレ判定法dirichlet’s testや交代級数判定法alternating Series testなどが使われることがある。交代級数判定法はディリクレ判定法から直接導かれ、収束性だけを判定したい場合は交代調和級数を例に考えると役立つ。
ディリクレ判定法
部分和sn=∑k=1nak が有界で、k→∞ の時bk↓0 ならば、∑k=1∞akbk は収束する:
∣sn∣<∞,bk↓0⟹∃k=1∑∞akbk
交代級数判定法
k→∞ の時bk↓0 ならば、∑n=1∞(−1)kbk は収束する。
bk↓0⟹∃k=1∑∞(−1)−kbk