内積空間
📂ヒルベルト空間内積空間
定義
Xをベクトル空間とする。x,y,z∈X 及び α,β∈C(または R)に対して、次の条件を満たす関数
⟨⋅,⋅⟩:X×X→C
を内積と定義し、(X,⟨⋅,⋅⟩)を内積空間と呼ぶ。
- 線形性:
⟨αx+βy,z⟩=α⟨x,z⟩+β⟨y,z⟩
- 共役対称性:
⟨x,y⟩=⟨y,x⟩
- 正定値性:
⟨x,x⟩≥0and⟨x,x⟩=0⟺x=0
説明
線形性と共役対称性から、次の式が得られる。
⟨x,αy+βz⟩==== ⟨αy+βz,x⟩ α⟨y,x⟩+β⟨z,x⟩ α⟨y,x⟩+β⟨z,x⟩ α⟨x,y⟩+β⟨x,z⟩
これは二番目の要素に対してアンチリニアであることを意味する。物理学、工学等では、内積が少しだけ異なって定義されることもある。たとえば、第一成分に対してアンチリニアで、第二成分に対してはリニアに定義されることもある。一方で内積空間では、以下のようにコーシー・シュワルツの不等式が成り立つ。
(X,⟨⋅,⋅⟩)が内積空間であるとする。すると、以下の不等式が成り立ち、これをコーシー・シュワルツの不等式と呼ぶ。
∣⟨x,y⟩∣≤⟨x,x⟩1/2⟨y,y⟩1/2,∀x,y∈X
また、内積から以下のようにノルムを定義できる。
∥x∥:=⟨x,x⟩,x∈X
このように内積から自然に導出されたノルムをassociated normとも呼ぶ。また、ノルムが与えられた場合には、ノルムから距離を定義できるので、距離空間の性質である完備性についても語ることができる。完備な内積空間をヒルベルト空間と呼ぶ。
特性
コーシー・シュワルツの不等式: 任意の x,y∈Xに対して、
∣⟨x,y⟩∣≤∥x∥∥y∥
平行四辺形の法則: 任意の x,y∈Xに対して、
∥x+y∥2+∥x−y∥2=2(∥x∥2+∥y∥2)
複素内積空間における偏極アイデンティティ: 複素内積空間 X及び任意の x,y∈Xに対して、
⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2+i(∥x+iy∥2−∥x−iy∥2))
実内積空間における偏極アイデンティティ: 実内積空間 X及び任意の x,y∈Xに対して、
⟨x,y⟩=41(∥x+y∥2−∥x−y∥2)
ノルム対内積: 任意の x∈Xに対して、
∥x∥=sup{∣⟨x,y⟩∣:y∈X,∥y∥=1}