コンプトン散乱
📂量子力学コンプトン散乱
公式
入射光の波長をλ、散乱された光子の波長をλ′としよう。このとき、以下の式が成り立つ。
λ′−λ=mech(1−cosθ)
ここで、hはプランク定数、meは電子の質量、cは光の速度、θは散乱角である。エネルギーについて表すと
cosθ=1−E′Emec2(E−E′)
説明
コンプトン散乱は、X線が電子と出会ったときにX線と電子がはじけ飛ぶ現象のことをいう。このとき、散乱されたX線は波長が長くなり、エネルギーの観点ではエネルギーが減少することになる。これはX線、すなわち光が粒子の性質を持っている証拠になる。
λ′−λ=mech(1−cosθ)>0が成り立つので、衝突後の光の波長は長くなる。これは実験結果と良く一致し、光が粒子の性質を持っていることを裏付けてくれる。
導出
戦略: 運動量保存則とエネルギー保存則を使用して結果を導き出す。
衝突前の光子の運動量をpγ、衝突前の電子の運動量をpe、衝突後の光子の運動量をpγ′、衝突後の電子の運動量をpe′としよう。

Part 1. 運動量保存則
衝突後の電子については情報がないので、pe′について整理しよう。
pγ+pe=pγ′+pe′
衝突前の電子は静止状態にあるのでpe=0である。
pγ+pe−pγ′=pe′
光子の静止質量は0なのでpγ=cE=chνであり、これを代入すると
c2h2ν2+c2h2ν′2−c22h2νν′cosθ=(pe′)2(1)
Part 2. エネルギー保存則
今、衝突前の光子のエネルギーをEγ、衝突後の光子のエネルギーをEγ′、衝突前の電子のエネルギーをEe、衝突後の電子のエネルギーをEe′としよう。すると
⟹⟹⟹Eγ′+Ee′Ee′(Ee′)2(Ee′)2=Eγ+Ee=Eγ+Ee−Eγ′=(Eγ+Ee−Eγ′)2=(Eγ)2+(Ee)2+(Eγ′)2+2EγEe−2EγEγ′−2EeEγ′
光子のエネルギーはE=hνであり、相対論的エネルギーはE=(mc2)2+p2c2であるので
h2ν2+me2c4+h2ν′2+2hνmec2−2h2νν′−2mec2hν′=mec4+(pe′)2c2
(pe′)2について整理すると
c2h2ν2+c2h2ν′2+2meh(ν−ν′)−c22h2νν′=(pe′)2(2)
Part 3.
(1)と(2)によって
⟹⟹⟹c2h2ν2+c2h2ν′2−c22h2νν′cosθ−c22h2νν′cosθ2meh(ν−ν′)(ν−ν′)= c2h2ν2+c2h2ν′2+2meh(ν−ν′)−c22h2νν′=2meh(ν−ν′)−c22h2νν′= c22h2νν′(1−cosθ)= mehc2νν′(1−cosθ)
両辺にνν′を割り、cを掛けると
ν′c−νc=mehc1(1−cosθ)
λ=νcであるので
λ′−λ=mech(1−cosθ)
E=hν=λhcなので上の式をよく整理すると
cosθ=1−E′Emec2(E−E′)
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