ポアンカレの再帰定理の証明
定理
ユークリッド空間で定義された多次元マップ $g : \mathbb{R}^{n} \to \mathbb{R}^{n}$ が単射であり、かつ連続であり、$D \subset \mathbb{R}^{n}$ がコンパクト不変集合、言い換えれば $g(D) = D$ だとしよう。任意の$\overline{x} \in D$の任意の近傍を$U$ とすると、ある$n \in$に対して$g^{n} (x) \in U$となるような$x \in U$が存在する。
説明
ステートメントは単純だ。$D$がコンパクト不変集合なら、その中で$U$を選んだ時、一時的に$U$を離れることはできないが、最終的にはその場所に戻ってくるタイミングがあるということだ。これは一回、二回、三回… と続けて適用できるので、どれだけ$g$が$U$を離れても必ず$U$に帰ってくる。
証明 1
以下のように$U$に$g$を繰り返し適用することを考えよう。 $$ U , g (U), g^{2} (U) , \cdots , g^{n} (U) , \cdots $$ 前提で$g$は単射だったので、これらは体積を正確に保持する。これらが重ならなければ、これらを含む$D$は無限の体積を持つことになる。しかし、前提で$D$はコンパクトなので、ある$k >l$に対して $$ g^{k} (U) \cap g^{l} (U) \ne \emptyset $$ 逆像を取ると $$ g^{k-l} \left( U \right) \cap U \ne \emptyset $$ よって、$n := k - l$に対して、$x \in U$と$g^{n} (x) \in U$を同時に満たす$x$が存在する。
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ウィギンス。(2003)。応用非線形動的システムとカオスへの入門 第2版:p101. ↩︎