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解析学の三つの公理:1 体の公理 📂解析学

解析学の三つの公理:1 体の公理

公理1

実数 a,b,cRa,b,c \in \mathbb{R} と演算 +,+,\cdot に対して、以下の性質が成立すると受け入れよう。

(A1) 加算に対する閉性: a+bRa+b \in \mathbb{R}

(A2) 加算に対する結合律: (a+b)+c=a+(b+c)(a+b) + c = a + (b+c)

(A3) 加算に対する交換律: a+b=b+a a+ b= b + a

(A4) 加算に対する単位元: すべての実数 aa に対して、a+0=0+a=aa+0=0+a=aを満たす00が一意に存在する。

(A5) 加算に対する逆元: すべての実数 aa に対して、a+(a)=(a)+a=0a + (-a) = (-a) + a = 0を満たす(a)(-a)が一意に存在する。

(M1) 乗算に対する閉性: abRa\cdot b \in \mathbb{R}

(M2) 乗算に対する結合律: (ab)c=a(bc)(a\cdot b) \cdot c = a \cdot (b\cdot c)

(M3) 乗算に対する交換律: ab=baa\cdot b= b \cdot a

(M4) 乗算に対する単位元: すべての実数 aa に対して、a1=1a=aa\cdot 1=1\cdot a=aを満たす11が一意に存在する。

(M5) 乗算に対する逆元: 00 を除くすべての実数 aa に対して、aa1=a1a=1a \cdot a^{-1} = a^{-1} \cdot a = 1を満たすa1{a^{-1}}が一意に存在する。

(D) 分配法則: a(b+c)=ab+aca \cdot (b + c) = a \cdot b + a \cdot c

説明

解析学入門は基本的に実数集合 R\mathbb{R} での関数を扱う科目だ。そしてこの解析学で最も戸惑う過程の一つが、こういった当然の事実について勉強することだ。今まで当然だったものを「厳密な」あるいは学生が感じるには「無駄な」レベルまで掘り下げる。厳密さにいつも渇望していた学生は興味を感じるだろうし、そうでない場合は少し力が入るだろう。

実数は義務教育過程で少しずつ拡張しながら自然に、直感的に受け入れてきた概念だ。そして、そんな明らかに知っていた「実数」が、演算に対して閉じているかどうかなんて話しているのはかなり退屈だ。特にその11の性質は私たちがあまりにも当然と思っているので、試験を前にして急いで暗記しているうちに数学者としての疑問感もなかなかなものだろう。

しかし、これら全てはより大きな学問を学ぶために乗り越えなければならない試練の部分だ。そして、しっかりと暗記する必要もない。しばらくすると抽象代数学を学ぶと、その11の性質をわざわざ記憶せずともスラスラと話せるようになる。そして、もう少しすると、それらの性質がいかに当たり前ではないが有益な性質なのかを理解することになる。例えば、次のような当たり前の事実も意外と証明が必要だ。

定理

任意の実数と 00 を掛け合わせると 00 である。

証明

aRa \in \mathbb{R} とする。0R0 \in \mathbb{R} であるから、0+0=00 + 0= 0 で、

a0=a[0+0] a \cdot 0 = a \cdot [ 0 + 0 ]

(D) 分配法則 によって、

a0=a0+a0 a \cdot 0 = a \cdot 0 + a \cdot 0

a0Ra \cdot 0 \in \mathbb{R}であるから、(A5) 加算に対する逆元が存在して、

a0+[(a0)]=a0+a0+[(a0)] a \cdot 0 + \left[ -(a \cdot 0) \right] = a \cdot 0 + a \cdot 0 + \left[ -(a \cdot 0) \right]

するとa0+[(a0)]=0a \cdot 0 + \left[ -(a \cdot 0) \right] = 0であるから、

0=a0 0 = a \cdot 0

関連項目を見る


  1. William R. Wade, An Introduction to Analysis (第4版, 2010), p5-6 ↩︎