解析学の三つの公理:第二順序公理
公理1
実数$ a,b,c \in \mathbb{R}$に対して、以下の性質が成立すると受け入れよう。
三分性: 与えられた$a,b$に対して、$a<b$または$a>b$または$a=b$でなければならない
推移性: $a<b$で、$b<c$ならば$a<c$
加算性: $a<b$で、$c\in \mathbb{R}$ならば$a+ c< b + c$
乗算性: $a<b$で、$c>0$ならば$ac< bc$、または$c<0$ならば$ac> bc$
説明
用語は相当古いものだが、とても当たり前の事実なので、理解するのに問題はないはずだ。体公理が数と演算に関するものであれば、順序公理は数の大小関係に扱う。
いわば、私たちは体公理よりも順序公理をより良く知っているかもしれない。解析学では二番目の公理だが、小学校で不等式(順序公理)を学び、中学校で無理数(体公理)を学ぶからだ。
体公理だけではできることがほとんどないが、順序公理が加わることで少しできることが増える。例えば、以下のような定理を証明できる。
定理
$0$ではない実数のべき乗は常に正である。
どうしてこんなことをわざわざ証明しなければならないのか理解に苦しむかもしれない。しかし、歴史的に考えてみれば、学者たちはわざわざ公理を先に作り出して、基礎から証明しようとしたわけではなく、すべてを証明しようとしたが証明できなかったものを集め、公理と呼んでいるのである。
つまり、わざわざそれを証明するために公理を作り出したのではなく、それを証明しようとすると公理が必要だったのである。一方で、すべてを正確に証明して厳密に検証することは、数学者の立場からは当然のことである。だから、あまり不公平に思わず、一歩一歩基盤を築いていると考えながら、楽しく学ぶ努力をしよう。
証明
三分性により、$a \ne 0$であれば、$a>0$または$a<0$の二つの可能性しかない。
ケース1.
$a>0$の両辺に$a$を掛けると、乗算性により
$$ a^2>a \cdot 0 $$
ケース2.
$a<0$の両辺に$a$を掛けると、乗算性により
$$ a^2>a \cdot 0 $$
実数に$0$を掛けると$0$になるので、どちらの場合でも
$$ a^2 > a \cdot 0=0 $$
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ウィリアム・R・ウェイド, 解析入門 (第4版, 2010), p6-7 ↩︎