距離空間における連続関数の性質
定理: 実数値関数
二つの関数 $f$, $g$が、距離空間 $X$から複素数への関数であるとする。
$$ f:X \to \mathbb{C},\quad g:X \to \mathbb{C} $$
二つの関数が連続であれば、$f+g$, $fg$, $f/g$も連続である。ただし、最後の場合には $g(x)\ne 0$が $x\in X$である場合に限る。
証明
$(X,d)$を距離空間、$E\subset X$を部分集合、$p$を$E$の集積点とする。$E$で定義された二つの複素数値関数 $f:E\to \mathbb{C}$、$g: E\to \mathbb{C}$が与えられたとする。そして、二つの関数がそれぞれ $p$で以下のような極限を持つとする。
$$ \lim \limits_{x \to p}f(x)=A \quad \text{and} \quad \lim \limits_{x \to p}g(x)=B $$
すると、
$\lim \limits_{x \to p}(f+g)(x)=A+B$
$\lim \limits_{x \to p}(fg)(x)=AB$
$\lim \limits_{x \to p}\left( \frac{f}{g} \right)(x)=\frac{A}{B},\ B\ne 0$
二つの $(X,d_{X})$、$(Y,d_{Y})$について、$E\subset X$であり、$p \in E$、$f : E \to Y$とする。すると、以下の二つの条件は同等である。
$f$が $p$で連続である。
$\lim \limits_{x \to p} f(x)=f(p)$である。
補題1と補題2により成立する。
■
定理: ベクトル関数
$f_{1}$、$f_{2}$、$\cdots$、$f_{k}$がそれぞれ距離空間 $X$から実数への関数であるとする。そして、$\mathbf{f}$を以下のように定義された関数とする。
$$ \mathbf{f}: X \to \mathbb{R}^{k} \quad \text{and} \quad \mathbf{f}(x)=(f_{1}(x),\cdots,f_{k}(x)) $$
すると、
(a) $\mathbf{f}$が連続である必要十分条件は、各々の $f_{1},\cdots,f_{k}$が連続であることである。
(b) $\mathbf{g}$も$\mathbf{f}$と同じ方法で定義された関数であるとする。$\mathbf{f}$、$\mathbf{g}$が連続であれば、$\mathbf{f}+\mathbf{g}$、$\mathbf{f}\cdot \mathbf{g}$も連続である。
証明
(a)
各々の$f_{i}$が連続であると仮定する。連続の定義により、各々の$f_{i}, \varepsilon_{i}$に対して
$$ d_{X}(x,p)<\delta_{i} \implies \left| f_{i}(x)-f_{i}(p) \right|< \varepsilon_{i} \quad(i=1,\cdots,k) $$
が成立するような $\delta_{i}$が存在する。したがって、$\delta=\min(\delta_{1},\cdots,\delta_{k})$とすると、
$$ d_{X}(x,p)<\delta \implies \left| \mathbf{f}(x)-\mathbf{f}(p) \right|=\sqrt{\sum\limits_{i=1}^{k}\left|f_{i}(x) -f_{i}(p) \right|^{2}}<\sum \limits _{i=1} ^{k}\varepsilon_{i}=\varepsilon $$
であるので、$\mathbf{f}$は連続である。逆に、$\mathbf{f}$が連続であると仮定すると、ある$\varepsilon>0$に対して
$$ d_{X}(x,p)<\delta \implies \left|f_{i}(x)-f_{i}(p) \right|\le \left|\mathbf{f}(x)-\mathbf{f}(p) \right|<\varepsilon $$
であるので、各々の$f_{i}$は連続である。
■
(b)
定理1および (a) により成立する。
■