冪級数の微分
定理1
べき級数 $\sum\limits_{n = 0}^{\infty} c_{n}x^{n}$が$\left| x \right| \lt R$で収束するとする。そして関数 $f$を次のように定義する。
$$ f(x) = \sum\limits_{n = 0}^{\infty} c_{n}x^{n} \qquad \left| x \right| \lt R \tag{1} $$
すると、関数 $f$は$(-R, R)$で連続であり、微分可能で、その導関数は以下の通りだ。
$$ f^{\prime}(x) = \sum\limits_{n = 1}^{\infty} nc_{n}x^{n-1} \qquad \left| x \right| \lt R \tag{2} $$
また、$f$と$f^{\prime}$の収束半径は同じだ。
説明
$(2)$はまるで$(1)$の無限の項を項ごとに微分したような結果を与える。つまり、べき級数を微分するとき、多項式を微分するようにしてもよいということだ。
$$ \dfrac{d}{dx}\left[ \sum\limits_{n = 0}^{\infty} c_{n}(x - a)^{n} \right] = \sum\limits_{n = 0}^{\infty} \dfrac{d}{dx} c_{n}(x - a)^{n} $$
注意しないといけないのは、$f^{\prime}$の収束半径が$f$と同じということだ。これは、$f$と$f^{\prime}$の収束区間が同じという意味ではなく、区間の端点では収束性が変わるかもしれない。
証明
$\lim\limits_{n \to \infty}\sqrt[n]{n} = 1$によって、
$$ \limsup\limits_{n \to \infty} \sqrt[n]{n |c_{n}|} = \limsup\limits_{n \to \infty} \sqrt[n]{|c_{n}|} $$
したがって、級数 $\sum\limits_{n = 0}^{\infty} nc_{n}x^{n-1}$の収束半径は$f$と同じだ。正の数 $\epsilon \gt 0$に対して、$(2)$の級数は$[-R + \epsilon, R - \epsilon]$で一様収束する。
区間 $[a, b]$で微分可能な関数列 $\left\{ f_{n} : f_{n} \text{ is differentiable on } [a, b] \right\}$が点 $x_{0} \in [a, b]$で点ごとに収束するとする。もし $\left\{ f_{n}^{\prime} \right\}$が区間 $[a, b]$で一様収束するなら、$\left\{ f_{n} \right\}$も区間 $[a, b]$で微分可能な関数 $f$に一様収束し、次が成り立つ。
$$ \dfrac{d}{dx} \lim\limits_{n \to \infty} f_{n} (x) = \lim\limits_{n \to \infty} \dfrac{d}{dx} f_{n} (x) \quad a \le x \le b $$
$f_{N}(x) = \sum\limits_{n = 0}^{N} c_{n}x^{n}$とし、$f_{N}^{\prime}(x) = \sum\limits_{n = 1}^{N} nc_{n} x^{n-1}$とすると、上記の補助定理の条件を満たす。したがって、$ \left| x \right| \lt R$で、
$$ \dfrac{df}{dx} = \dfrac{d}{dx} \lim\limits_{N \to \infty} \sum\limits_{n = 0}^{N}c_{n}x^{n} = \lim\limits_{N \to \infty} \dfrac{d}{dx} \sum\limits_{n = 0}^{N}c_{n}x^{n} = \lim\limits_{N \to \infty} \sum\limits_{n = 1}^{N}nc_{n}x^{n-1} = \sum\limits_{n = 1}^{\infty}nc_{n}x^{n-1} $$
また、微分可能なら連続なので、$f$は連続だ。
■
Walter Rudin, Principles of Mathmatical Analysis (3rd Edition, 1976), p173-174 ↩︎