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粒子系の運動エネルギー 📂古典力学

粒子系の運動エネルギー

粒子系の運動エネルギー1

粒子系の直線運動量角運動量を定義したのと同じように、粒子系の運動エネルギーも各粒子の運動エネルギーの合計として自然に定義することができる。

$$ \begin{equation} T=\sum \limits _{i=1} ^{n} \frac{ 1}{ 2 }m_{i}v_{i}^{2} \label{kinetic} \end{equation} $$

これから粒子系の直線運動量、角運動量を質量中心に関して示したのと同じ作業をする。まず、各粒子の位置ベクトルを以下の図のように質量中心に関する表現として示そう。

$$ \mathbf{r}_{i}=\mathbf{r}_{cm}+\overline{\mathbf{r}}_{i} $$

これを時間に関して微分すると次のようになる。

$$ \mathbf{v}_{i}=\mathbf{v}_{cm}+\overline{\mathbf{v}}_{i} $$

上の式を$\eqref{kinetic}$に代入すると以下のようになる。

$$ \begin{align*} T &= \sum \limits _{i=1} ^{n}\textstyle{\frac{1}{2}}m_{i}(\mathbf{v}_{i}\cdot \mathbf{v}_{i}) \\ &= \sum \limits _{i=1} ^{n}\textstyle{\frac{1}{2}}m_{i}(\mathbf{v}_{cm}+\overline{\mathbf{v}}_{i})\cdot (\mathbf{v}_{cm}+\overline{\mathbf{v}}_{i}) \\ \ &= \sum \limits _{i=1} ^{n} \textstyle{\frac{1}{2}}m_{i}v_{cm}^{2}+\sum \limits _{i=1} ^{n}m_{i}(\mathbf{v}_{cm}\cdot \overline{\mathbf{v}}_{i})+\sum \limits _{i=1} ^{n}\textstyle{\frac{1}{2}}m_{i}\overline{v}_{i}^{2} \\ &= \textstyle{\frac{1}{2}}v_{cm}^{2} \sum \limits _{i=1} ^{n}m_{i}+\mathbf{v}_{cm}\cdot \left( \sum \limits _{i=1} ^{n}m_{i}\overline{\mathbf{v}}_{i}\right)+\sum \limits _{i=1} ^{n}\textstyle{\frac{1}{2}}m_{i}\overline{v}_{i}^{2} \end{align*} $$

この時、第二項の括弧は$\mathbf{0}$を参照している。2 従って、粒子系の運動エネルギーは以下のようである。

$$ T=\textstyle{\frac{1}{2}}mv_{cm}^{2} + \sum \limits _{i=1} ^{n}\frac{1}{2}m_{i}\overline{v}_{i}^{2} $$

第一項は質量中心に対する運動エネルギーである。第二項は各粒子の質量中心に対する運動エネルギーである。このように運動エネルギーを質量中心に関する項と質量中心を基準とした時の相対的な項に分けて理解することは、物理学の多くの部分で役に立つ。


  1. Grant R. Fowles and George L. Cassiday, Analytical Mechanics (7th Edition, 2005), p282 ↩︎

  2. (4を参照) ↩︎