一次線形微分方程式システム
ビルドアップ1
質量が$m$、減衰係数が$\gamma$、バネ定数が$k$の時、スプリングに吊るされた物体の振動を示す運動方程式は以下の通りだ。
$$ m x^{\prime \prime} + \gamma x^{\prime} + kx = F $$
$x_{1}=x$、$x_{2}=x_{1}^{\prime}$とすると、上の運動方程式は以下のようなシステムとして表現できる。
$$ \begin{align*} x_{1}^{\prime}(t) =&\ x_{2}(t) \\ x_{2}^{\prime} (t) =&\ x_{1}^{\prime \prime}(t) = -\dfrac{\gamma}{m}x_{2}(t)-\dfrac{k}{m}x_{1}(t)-\dfrac{1}{m}F(t) \end{align*} $$
これを以下のように行列で表せる。
$$ \begin{align*} && \begin{pmatrix}x_{1}^{\prime} \\ x_{2}^{\prime}\end{pmatrix} =&\ \begin{pmatrix} 0 & 1 \\ -\dfrac{k}{m} & -\dfrac{\gamma}{m} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x_{1} \\ x_{2} \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} 0 \\ -\dfrac{1}{m}F \end{pmatrix} \\ \implies&& \mathbf{x}^{\prime}(t) =&\ A\mathbf{x}(t)+g(t) \end{align*} $$
$g(t)=0$が同次方程式の場合、2階微分方程式の解は$\mathbf{x}^{\prime}=A\mathbf{x}$の行列乗算を解く問題に単純化されることが分かる。
一般化
$x_{1}$、$x_{2}$、$\cdots$、$x_{n}$を$t$に対する関数としよう。$F_{1}$、$F_{2}$、$\cdots$、$F_{n}$を$x_{1}$、$x_{2}$、$\cdots$、$x_{n}$に対する関数としよう。すると$x_{i}(t),$ $1\le i \le n$に対する1階微分方程式のシステムは以下の通りだ。
$$ \begin{align*} x_{1}^{\prime}(t) =&\ F_{1}(t,x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}) \\ x_{2}^{\prime}(t) =&\ F_{2}(t,x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}) \\ \vdots & \\ x_{n}^{\prime}(t) =&\ F_{n}(t,x_{1},x_{2},\cdots,x_{n}) \end{align*} \tag{1} $$
この時、各$F_{i}$が線形ならば線形システムと呼び、そうでなければ非線形システムと呼ぶ。1階線形微分方程式システムのより一般的な形は以下の通りだ。
$$ \begin{align*} x_{1}^{\prime}(t) =&\ p_{11}(t)x_{1}(t)+\cdots p_{1n}(t)x_{n}(t) + g_{1}(t) \\ x_{2}^{\prime}(t) =&\ p_{21}(t)x_{1}(t)+\cdots p_{2n}(t)x_{n}(t) + g_{2}(t) \\ \vdots & \\ x_{n}^{\prime}(t) =&\ p_{n1}(t)x_{1}(t)+\cdots p_{nn}(t)x_{n}(t) + g_{n}(t) \end{align*} $$
$$ \mathbf{x}^{\prime}(t) = \mathbf{P}(t)\mathbf{x}(t) + \mathbf{g}(t) $$
この時、$\mathbf{x}$、$\mathbf{g}$はベクトル値関数、$\mathbf{P}$は行列関数だ。 各$g_{i}(t)$が$0$であれば同次システム、そうでなければ非同次システムと呼ぶ。
ソリューション
区間$I : \alpha \lt t \lt \beta$上のODEシステム$(1)$のソリューションは、区間$I$上の各点で微分可能な$n$個の関数で構成される。
$$ x_{1} = \phi_{1}(t),\quad x_{2} = \phi_{2}(t),\quad \dots,\quad x_{n} = \phi_{n}(t) $$
初期条件
固定された$t_{0} \in I$と$x_{i}^{0}$に対して、次の$n$個の条件を初期条件と呼ぶ。
$$ x_{1}(t_{0}) = x_{1}^{0},\quad x_{2}(t_{0}) = x_{2}^{0},\quad \cdots,\quad x_{n}(t_{0}) = x_{n}^{0} \tag{2} $$
ODEシステム$(1)$と初期条件$(2)$を組み合わせたものを初期値問題と呼び、通常はIVPと略される。「初期値問題のソリューションを見つけること」を「初期値問題を解く」と言う。初期値問題のソリューションは、ピカールの定理によってその存在と一意性が保証されている。
William E. Boyce, Boyce’s Elementary Differential Equations and Boundary Value Problems (11th Edition, 2017), p281-283 ↩︎