エルミート関数が満たす微分方程式の演算子解法
定理
与えられた微分方程式
$$ y_{n}^{\prime \prime}-x^{2}y_{n}=-(2n+1)y_{n},\quad n=0,1,2,\cdots \tag{1} \label{eq1} $$
$(1)$の解は以下の通りであり、エルミート関数と呼ばれる。
$$ \begin{align*} y_{n} &= \left( D-x \right)^{n} e^{-\frac{x^{2}}{2}} \\ &= e^{\frac{x^{2}}{2}} D^{n} x^{-x^{2}} \end{align*} $$
ここで、$D$は微分演算子 $D=\frac{ d }{ dx }$である。
説明
$y_{n}$の最初の式は、微分方程式を解いて直接得ることができる。二番目の式が最初の式と同じであることは、数学的帰納法によって証明できる。
証明
微分演算子の性質 $(e)$, $(f)$により、与えられた微分方程式を以下のように表すことができる。
$$ \begin{align} (D-x)(D+x)y_{n} &= -2ny_{n} \\ (D+x)(D-x)y_{n} &=-2(n+1)y_{n} \end{align} $$
$(2)$に $n$の代わりに$n-1$を代入して両辺に$(D-x)$を適用すると、以下を得る。
$$ \begin{equation} (D-x)(D+x)(D-x)y_{n-1} = -2n(D-x)y_{n-1} \end{equation} $$
$(1)$に $n$の代わりに$n+1$を代入して両辺に$(D+x)$を適用すると、以下のようになる。
$$ \begin{equation} (D+x)(D-x)(D+x)y_{n+1} = -2(n+1)(D+x)y_{n+1} \end{equation} $$
ここで、$y_{n}$は以下の式を満たすとする。
$$ \begin{align*} (D-x)y_{n-1} &= y_{n} \\ (D+x)y_{n+1} &= y_{n} \end{align*} $$
すると、$(3)=(1)$であり、したがって$(4)=(2)$となるので、$y_{n}$はやはり微分方程式を満たす。したがって、このような性質を持つ$y_{n}$を見つけよう1。
$(D-x)$は$y_{n-1}$を$y_{n}$に変えるので、昇格演算子としよう。逆に$(D+x)$は$y_{n+1}$を$y_{n}$に変えるので、降格演算子としよう。これで$(3)$, $(4)$を満たす$y_{0}$を見つければ、昇格演算子を通じて微分方程式の解$y_{n}$を表現できるようになる。$y_{0}$は基底状態なので、降格演算子を適用した時$0$となる。これは物理的な条件である2。したがって、以下の式を得る。
$$ (D+x)y_{0}=0 $$
この方程式は単純な分離可能な微分方程式である。 $$ \begin{align*} && \frac{ d y_{0}}{ d x } &=-xy_{0} \\ \implies && \frac{1}{y_{0}}dy_{0} &=-xdx \\ \implies && \ln y_{0} &= -\frac{x^{2}}{2} \\ \implies && y_{0} &=e^{-\frac{x^{2}}{2}} \end{align*} $$
したがって、$y_{n}$は以下の通りである。
$$ y_{n}=(D-x)^{n}y_{0}=(D-x)^{n}e^{-\frac{x^{2}}{2}} $$
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