CT(コンピュータ断層撮影)の原理
原理
CTはComputerized Tomographyの略語で、コンピュータ断層撮影と言います。体の断面写真を取得する技術で、MRIと同じく一般にもよく知られている医療画像です。
私たちの体は、骨、筋肉、水など様々な物質で構成されています。CTはこれらの物質がX線1を吸収する度合いが異なることを利用して断面写真を取得します。以下の図を見てください。
(が)で、白い四角は放射線を多く吸収する物質(例えば骨)としましょう。放射線はこの四角を通過する際に$1$だけ吸収されます。黒い四角は放射線をあまり吸収しない物質(例えば水、脂肪)としましょう。放射線はこの四角を通過する際に$0$だけ吸収されます。すると、(が)でそれぞれの矢印方向に進んだ放射線は矢印の終点に書かれた数字だけ吸収されます。
今、(な)を見てください。CTで行うべきことは、矢印の終点に書かれた数字から四角の中の数字を当てることです。各四角が$0$または$1$の値を持つとすると、手計算でもそれほど難しくなく見つけ出すことができます。しかし、値を少し変えてみると、そのような結果が出る組み合わせが唯一ではないことがわかるでしょう。次の例を見てください。
(だ)と(ら)は異なりますが、それぞれの放射線が吸収された量が正確に一致しています。つまり、この情報だけでは私たちが知りたいこと(体の断面写真)を正確に知ることができません。今、別の方向から放射線を撃ってみましょう。
(ま)と(ら)で斜めに撃った放射線の吸収度が異なるので、二つのケースを区別できます。したがって、これらの四角が放射線をどれだけ吸収するかを知るためには、できるだけ多くの方向から放射線を撃って、それぞれがどれだけ吸収されたかを知る必要があります。
放射線を撃つ数が多ければ多いほど、方向が多様であればあるほど、体の断面についての情報を正確に得ることができます。そのため、CT撮影装置は上の写真のように円形になっており、できるだけ多くの方向から放射線を撃って情報を得るためにグルグル回ります。
数学的理論:ラドン変換
体内の各部位で放射線が吸収される度合いを表す関数を$f$としましょう。すると、各放射線に対して吸収された度合いを表す関数は$f$のラドン変換 $\mathscr{R}f$です。
下では、左の写真が脳の断面写真です。これを$f$とすると、実際にCTで得られるデータ$\mathcal{R}f$は下の右の図のようです。
CTデータ$\mathcal{R}f$はラドン逆変換という過程を経て、私たちが知りたかった写真に復元されます。
放射線、X線、光、全部同じだと思って大丈夫です。 ↩︎